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【公演評】星組『シラノ・ド・ベルジュラック』

轟悠が個性的な鼻と美しい言葉を持つ剣豪詩人となり不朽の名作に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター


 星組公演、ミュージカル『シラノ・ド・ベルジュラック』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました。

 この作品は17世紀のフランスに実在した剣豪詩人・シラノを主人公にした戯曲で、1897年にパリで初演以来、世界各地で上演され続けてきた名作です。宝塚でも1995年に星組で『剣と恋と虹と』と題してミュージカル化され、好評を博しました。

 主演に専科の轟悠さんを迎え、瀬央ゆりあさんを始めとする星組メンバー32名で、この不朽の名作に挑みます。

豪快で愛らしい軍人の轟

 主人公のシラノは、ガスコン青年隊に属する剣の達人で、同時に天賦の詩人でもありました。天下無双の豪傑でしたが、その特徴的な鼻がコンプレックスだったため、従妹のロクサアヌへの恋心も、胸の内に秘めるだけだったのです。

 この魅力あるシラノを演じる轟さんは、この夏、理事から特別顧問となりました。名実ともに劇団の重鎮ですが、今も現役バリバリに主演をつとめ、若手たちに男役の極みと演技のお手本を示しています。

――17世紀、フランス。ある日、シラノは愛するロクサアヌ(小桜ほのか)から誘いを受け、心躍らせる。しかしその中身は、今朝、ガスコン青年隊に配属されたクリスチャン(瀬央)への恋の相談だった。決闘の決まりから彼を守ってほしい、そして自分あての手紙を書いてもらうよう伝えてほしいと言う。無邪気に自分を信頼するロクサアヌのため、シラノは心ならずも恋の仲介役を引き受けるのだった。

 シラノの大きな鼻はこの作品のシンボルです。過去の映画や舞台ではかなり誇張されていますが、そこは宝塚。ごく自然なつけ鼻の轟さんはしっかりと二枚目のままで、決して夢は壊しません。

 シラノは文武両道で人望も厚く豪快な性格なのに、ロクサアヌにはドギマギしてしまうのが、いじらしくてたまらない。最後の最後まで人のために生きる様は、もどかしくもあり、切なくもあり、見ていて苦しくなるほど。轟さんはさすがの存在感と演技力で、情感豊かに“漢な男”シラノを作り上げていました。

美声と落ち着いた演技の小桜

 ロクサアヌを演じる小桜さんは、これが別箱公演の初ヒロインとなりました。歌・ダンス・演技の三拍子そろった実力派で、特に歌唱力の高さは、2019年の『ロックオペラ モーツァルト』のアロイジア役でお墨付き。大人っぽく落ち着いた雰囲気は、轟さんの相手役にもふさわしく、お芝居でのかけあいはもちろん、フィナーレのデュエットダンスもごく自然に溶け合っていました。

 ロクサアヌは純粋無垢なお嬢様ですが、ただゆめゆめしいだけではなく、行動力にもあふれた才女。クリスチャンに会うため戦場に乗り込みますが、兵士たちへの食糧も忘れないしっかりものです。小桜さんの実力は安心感があり、豊かな歌唱力を生かしながら、轟さんとも瀬央さんとも息の合った演技を見せていました。

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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