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舞台『キオスク』に出演 橋本さとしインタビュー/上

激動の時代にも信念を貫く人物をしっかりと演じたい

橘涼香 演劇ライター


 ナチスドイツが台頭し、ヒトラーのホロコーストが始まる激動の時代を迎えた1937年のオーストリアを舞台に、ウィーンのキオスク(タバコ店)で働くことになった17歳の青年フランツの、さまざまな大人たちとの交流や初恋を通じた波乱の成長、切なくも純粋な青春を描き上げた舞台『キオスク』が、2021年1月22日~24日兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、同2月11日~21日東京芸術劇場 プレイハウスで上演される(のち静岡・愛知・広島公演もあり)。

 時代に翻弄される人々を描いたこの作品は、2019年12月から2020年1月にかけて石丸さち子上演台本・演出のリーディング版として上演され、好評を博した。それを受けての今回の公演は、原作小説の作者であるローベルト・ゼーターラー本人が、原作に忠実に作りあげた戯曲版を、ジャニーズJr.を卒業後もミュージカルやコメディなど幅広い作品で活躍し、演技派俳優の道を突き進む林翔太主演、石丸さち子演出を擁しての本邦初演となる。共演陣にも大空ゆうひ、東京パフォーマンスドールの上西星来、吉田メタル、堀文明、そして一路真輝、山路和弘と、多彩なキャストが集結。新たな舞台のはじまりに大きな注目が集まっている。

拡大橋本さとし=岩田えり 撮影
 

 そんな舞台で、主人公の青年フランツがウィーンで働くキオスクの店主・オットー・トゥルスニエクを演じるのが、ミュージカル、ストレートプレイと数多くの作品で大活躍を続けている橋本さとし。時代の激動にのみ込まれていくオーストリア・ウィーンで、自立の扉を開いていくフランツを導く重要な役柄を橋本がどう演じるのか。コロナ禍に揺れた2020年から、2021年の新作舞台に懸ける想いを聞いた。

行間から絵が浮かび上がってくる台本

──作品について今感じていることから教えて下さい。

 まず「キオスク」と聞いて最初に連想したのが、駅のホームにある売店だったんですよ!

──日本人はほとんどそうではないかと思います!

 ですから私たちの日常に溶け込んでいる情景を思い浮かべていたのですが、本来ヨーロッパにある「キオスク」というのは人々がお酒を飲んだり、色々な情報交換をして寛ぐ憩いの場所なんです。しかも作品の時代背景は第二次世界大戦が目前の時代で、そこで人々がどんな暮らしをしていたのか、どういう思いで日々を過ごしていたのかがすごくリアルに描かれている作品で。本を読んだ時に僕にしては珍しく、最初から最後までバーッと絵が浮かんだんです。これは面白いな、是非やらせて頂きたいという気持ちになりました。

 ナチスドイツが台頭していく中で、ユダヤの人たちへの差別的な政策が次々と行なわれていく。それを容易には受け入れられない人々が、もがき苦しみながらも、激動の時代をどう生きていくか?という、パワーのいるストレートプレイになっています。2020年に僕は劇団☆新感線の『偽義経冥界歌』とミュージカル『ビリー・エリオット』という、華やかでファンタジー性もある作品に出させて頂いてきたのですが、ここでどしっとした重みのあるストレートプレイというのは、自分自身が渇望していたものでもあるし、そこに入れることで自分の演劇の原点にまた立ち帰りたいなと思っています。

拡大橋本さとし=岩田えり 撮影

──今、台本を読まれている時に「珍しく絵が浮かんだ」とおっしゃいましたが、普段はお稽古に入られるまでは、舞台の情景を思い浮かべたりは敢えてなさらないのですか?

 そうですね。やっぱりひとつの舞台を作る時には、演出家の要求することにできる限り応えたいですし、そのためには先入観も何もない真っさらな、できるだけフラットな状態で稽古に入りたいという意識が強いんです。もちろん自分の役については事前に色々と考えますが、作品全体のことは、なるたけ深読みをしないようにしています。でもこの作品に関しては、台詞やト書きの行間の中から、背景や光景が浮かび上がってくるものがとても多かったので、自分でも非常に印象的でした。それだけに僕の頭に浮かんだ絵と、演出の石丸さち子さんが要求してくる絵に共通項が多いのか、或いは反比例していくようなものになるのか、という点でも楽しみにしています。

◆公演情報◆
『キオスク』
兵庫:2021年1月22日(金)~1月24日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
東京:2021年2月11日(木・祝)~2 月21 日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
静岡:2021年2月23日(火・祝) 静岡市清水文化会館 マリナート 大ホール
愛知:2021年2月25日(木) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
広島:2021年2月27日(土) JMSアステールプラザ 大ホール
オフィシャルサイト
[スタッフ]
作:ローベルト・ゼーターラー
翻訳:酒寄進一
演出:石丸さち子
[出演]
林 翔太、橋本さとし
大空ゆうひ、上西星来(東京パフォーマンスドール)、吉田メタル、堀 文明、
一路真輝、山路和弘
 
〈橋本さとしプロフィル〉
 1989年、劇団☆新感線にて俳優デビュー。1997年劇団☆新感線を退団後、舞台のみならず映像分野でも数々の作品で活躍。『ミス・サイゴン』や『レ・ミゼラブル』で主役を演じるなどミュージカルでの活躍が際立つが、ストレートプレイにも多数出演している。近年の主な舞台出演作品に、『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』、『偽義経冥界歌』、『Q:A Night At The Kabuki』、『メタルマクベス』disc1など。また、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)でレギュラーナレーションを務める。現在、映画『新解釈・三國志』(関羽役)が公開中。2021年5月からは、ミュージカル「ブロードウェイと銃弾」の出演を控えている。
オフィシャルホームページ

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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