神田桂一(かんだ・けいいち) フリーライター
1978年、大阪生まれ。関西学院大学法学部卒。一般企業勤務から週刊誌『FLASH』の記者、ドワンゴ『ニコニコニュース』記者などを経てフリー。カルチャー記事からエッセイ、ルポルタージュまで幅広く執筆。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社=菊池良と共著)など。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
フィクションとノンフィクションを越境する二人の共通点
僕は沢木耕太郎と村上春樹にもっとも影響を受けた。そのふたりの著作を一番よく読んでいるからだ。
沢木耕太郎で一番最初に読んだのは『テロルの決算』だった。衝撃だった。僕がまだ20代で週刊誌の記者をやっていた頃だ。僕が驚いたのは、その物語の構成力だった。それまで、ノンフィクションというものは、事実を淡々と記述するものという認識を持っていた。だが『テロルの決算』は全然違った。そのストーリー性というと、なんだかノンフィクションとして陳腐に聞こえるが、最後の一点に向かっての、必然としかいいようのない展開に圧倒されたのだ。それ以降、各ノンフィクション賞の受賞作をチェックし、過去のものも含めて、ノンフィクションを貪り読むようになった。また、『深夜特急』を読んで、社会人になってからの遅れてきたバックパッカーになったりもした(現在も進行中)。
時を同じくして、僕は、記者をやりながら『クイック・ジャパン』という雑誌にライターとして寄稿するようになっていた。その雑誌は、赤田祐一さんという編集者が作った雑誌で、僕はそこに載っているルポが大好きでよく読んでいたのだ。そこに載っているルポは一風変わったものが多く、それが『ニュージャーナリズム』という、その雑誌が掲げていたライティング・スタイルによるものだということは、記事を読み出した当初は、あまり意識していなかった。
しかし、実際にルポを書かせてもらえるようになったころには、ニュージャーナリズムについても興味を持って、トム・ウルフやゲイ・タリーズ、ハンター・S・トンプソンなどといったアメリカのニュージャーナリズムの代表的な作家の作品を読んだりした。そうすると、点と点が結びつくのは時間の問題だった。沢木耕太郎の存在がここでまた浮上して
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