2020年12月17日
『鬼滅の刃』の大ヒットの理由については、作品そのものの魅力の解説や、マーケティングの観点からの分析がさまざまになされているが、いずれも後付けのもので、真の答えなどない。
大ヒットを狙って綿密な計算と計画があったのではなく、大ヒットしてしまったのだ。
まねしても大ヒットはしない。
解説も分析も、意味がないとは言わないが、あまり説得力はないと思う。
この記事では、『鬼滅の刃』がこれまでのマンガ、アニメとは異質な点をいくつか指摘していく。
『鬼滅の刃』のコミックスの何がすごいって、ブックオフに売っていないことだ。
たまたま私が住んでいる地域がそうなのかもしれないが、ブックオフのネットショップを見ても品切れだから、全国的に、同じだろう。
古書店へ出ないということは、買った人たちがまだ手放さないでいる。あるいは、誰かが売りに出したとしても、すぐに売れてしまうということだ。
こんなに売れているのに、ブックオフにないのは、いかに愛されているかということでもある。
こういう例は、あまりないのではないか。
私が『鬼滅の刃』という売れているマンガがあると知ったのは、去年(2019年)だった。
だが、読み始めたのは今年になってからだ。
5月に、1巻から買おうと思って近くの書店へ行ったが、全巻は揃ってなく、その日、5月19日は店にあった5、6、20巻を買った。
20巻が最新刊で5月13日発売、帯には「初版280万部達成!! 累計6000万部突破!!」とある。
この時点では、Amazonにも新刊の在庫はなく、中古が定価よりも高値で売られていた。
それから近隣の書店で見つけては買っていき、20巻まで揃ったのが6月13日。
この頃、連載は終了し、23巻で終わることが「短い」と話題になった。
7月3日に発売となった21巻は発売日に買えた。
帯には「初版300万部達成!! 8000万部突破!!」とある。2か月で2000万部も売ったのだ。
そして22巻は10月2日発売、映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開が16日。
22巻の帯には「1億部突破!」とある。2か月でまた2000万部だ。
映画が大ヒットしているさなかの12月4日、最終巻となる23巻が発売された。
発売日の朝9時半に書店へ行ったときは、まだ荷をほどいて、積んでいるときで、その一冊を買った。夕方行ったら、もう売り切れていた。
23巻の帯には部数は記されていない。報道によれば、初版395万部で、1億2000万部突破。すさまじい。
出版物の売り上げは、ここ20年以上、前年同月比マイナスが続いているが、去年から、『鬼滅の刃』の新刊が出る月は前年比プラスのこともある。
1点のマンガが出版統計全体を左右しており、これは村上春樹と『ハリー・ポッター』シリーズのそれぞれの全盛期以来だ。
「ごとうげこよはる」と読む。ペンネームだと思うが、そうなのかも公式には明かされていない。
「少年ジャンプ」での連載が終わった5月、週刊誌が
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください