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「ランボー」は戦争がつくったフランケンシュタインの悲劇だった

【1】「ランボー」の原作を読んでみた

中川文人 作家

元グリーンベレーと警察の戦い

 顔と体型はよく似ているが、性格は全然違う。そういう親子もいるものだが、小説『一人だけの軍隊』と映画『ランボー』の関係もそうである。両者はよく似ているが、中身は全然違う。

 まず、映画『ランボー』から見てみよう。

 映画『ランボー』の公開は1982年(アメリカでは10月、日本では12月)。監督はテッド・コッチェフ、主演はシルヴェスター・スタローンである。スタローンはロッキーシリーズの大ヒットで人気俳優となり、ランボーシリーズの大ヒットでその地位を不動のものとする。

 物語の舞台はアメリカ西海岸最北部、ワシントン州のホリデータウンである。「西海岸」というとリベラルなイメージがあるが、この町は保守的で閉鎖的な田舎町である。主要な登場人物は、ベトナム帰還兵のジョン・ランボー、保安官のティーズル、ランボーの元上官にあたるトラウトマン大佐の三人。

 ランボーは元グリーンベレーの隊員でゲリラ戦のスペシャリスト。ベトナム戦争に従軍し、数々の武勲を残した「戦争の英雄」なのだが、帰還後は社会に溶け込めず、孤立し、社会の底辺を彷徨う。また、北ベトナム軍の捕虜収容所で拷問を受けた過去があり、それがトラウマになっている。

 ティーズルはホリデータウンの保安官。「この町では俺が法律だ」と言い放つ傲慢な男である。また、縄張り意識が強く、よそ者、流れ者を敵視している。この物語はランボーとティーズルの対立を軸に展開する。

 トラウトマンは国防総省から派遣されてやってきたグリーンベレーの大佐。ランボーを訓練し、戦場で共に戦った上官であり、戦争で心に傷を負ったランボーのよき理解者でもある。この物語ではランボーとティーズルの間に立ち、事態の収拾を図ろうとする。 

拡大沖縄のグリーンベレー部隊=1971年10月、沖縄本島中部・ハンビー飛行場

悪いのは警察、ランボーは悪くない!

 1981年12月、カーキ色の野戦用ジャケットを着たジョン・ランボーが戦友に会うためにワシントン州を訪れる。が、戦友の母親はランボーにこう告げる。「死んだわ。去年の夏にね。ガンよ。ベトナム戦争の

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筆者

中川文人

中川文人(なかがわ・ふみと) 作家

1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。本の情報サイト『好書好日』で「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。総合誌『情況』にてハードボイルド小説「黒ヘル戦記」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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