コロナ禍下のテレビの異様さに馴れ、コロナにも馴れてしまった一年
2020年12月23日
2020年のテレビ番組総括ということで、私の心に残った番組を5本挙げてみたい。感動とか感激とかいうものはもちろんであるが、呆れるとか腹がたつ、というのも含めての「心に残る」である。
つい先日も『エール』の終わり方の秀逸さについてこちらで書いたが、その後もジワジワとあの最終回の見事さを思い返している。ドラマの終わりではなくて、NHKホールでの“古関裕而コンサート”の、最終回。
『エール』の超上手な終わり方。やりすぎないことがとにかく大事!
15分で見事に盛り上げて完結させた、あのショーの演出家はすごい腕だと賞賛し続けたいし、15分のワクをきっちり守りながらああいうショーで終わらせたというアイディアも良いし、それが「いかにも蛇足」に堕さなかったのもえらい(古関裕而の楽曲がいちばんえらいのかもしれない)。
2020年のテレビを総括すればやはりコロナは避けて通れず、連続ドラマはモロにその影響をかぶったわけだ。『エール』がはたしてコロナでの中断によって、当初の内容から変更を余儀なくされたのか、それとも何の変更もなかったのか、それはわからない。でも、最終回の“古関裕而ショー”はやることに決まってたんじゃなかろうか。そしてたぶん、「東京五輪のあとに終わったエールの最終回」よりも「コロナで冬になって終わったエールの最終回」のほうが、あのコンサートを見る者にはグッときただろう。
これが、2020年に放映された何万本という番組の中で5本の指に入るのかと思うと自分がイヤになる。が、ホント、忘れられない番組だったんです。でも、こんな番組もう誰もおぼえちゃいないだろうし、製作者も出演者も見た人ももう忘れたいと思ってるにちがいない。
説明すると、競輪最大のレースである「日本選手権競輪(ダービー)」の決勝を、地上波で放映する予定だったのに、コロナで中止になってしまい、しょうがないからスタジオで坂上忍や田中みな実や武井壮が一生懸命カラ元気で盛り上げ(いや、田中みな実だけはやる気のない死んだ目をしていた)、女子競輪選手の手洗い指導ビデオなどでつないだ、というモノ。
これはコロナの影響が二重に及んでいて、というのも競輪はメジャーになることが悲願であり(私は競輪ファンですけど、それはムリじゃないかと思う……)、そのためにはオリンピックのケイリン競技でメダルを取ればなんとかなる!と思っており(たぶん。でも取ってもムリだと思う……)、東京オリンピックは「地元ニッポンで、悲願達成の舞台」として、開催が決まった瞬間からもう競輪関係者が前のめりになっていたのだ。それでここ何年も、競輪の地上波中継では、決勝レースそっちのけでケイリン競技に出る選手に密着していたりして、心ある競輪ファンからは苦々しく思われていたのである。
そしたら東京オリンピックも延期……。
まあ、延期だから来年また同じように盛り上げにかかるんだろうけど、それはそれとして、この中継は「五輪を控えて競輪界が皆さまに、“メダルを取るであろう素晴らしいアスリートをご紹介いたします!”」の場になるはずだったのに。それが
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