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大阪15年→ソウル15年→東京10年→ソウル10年。いちばん厳しいのは東京だった

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

 私の生まれた大阪では、1年の間で、雪が降ったり、気温がマイナスになったりする日は少ししかなかった。

 韓国は12月半ばなのに最低気温マイナス12度を記録し、今朝窓の外を見ると雪が積もって真っ白になっていた。ソウルに雪が積もるのは今年2度目である。

 マイナスの気温では雪が積もると溶けずにそのまま凍り、道が滑って非常に危ない。けどこっちの人たちは滑ることはなく、上手に歩く。

 たまに子供がすってんころりんと転ぶと、オンマ(お母さん)が起こしている姿をよく見かける。

 地域性であろう。生まれた時から慣れているのでしょうね、大したものである。

Stock for you/Shutterstock.com

 地域性といえば、私は大阪で育ち15年、そしてソウルで15年、そして東京で10年、でまたソウルで10年目の生活をしている。

 私的には普通の人生ですが、周りからは変わっていると言われる。全ての場所が楽しかったが、まあちょうど日本と韓国が半々なのでなんか面白い。

東京がいちばん厳しかった

 初めのソウルも厳しかったが、ある意味1番厳しかったのが東京かな……よそ者にきびしい。

 まず住む家をなかなか借りれなかった。あまりにも借りれないので、理由を不動産の人に聞いてみたら、「東京では在日外国人は日本に永住権があっても一般の外国人と同様に思われて、売買は簡単だが賃貸は信用問題になるので難しい」と。

 ではなぜ外国人はダメかってたずねると、規約を守らないから、と。よく部屋でパーティーするイメージがあるからって……。

 私はあるマンションを借りようとしていたが、管理会社が中に入ったり、普通では払わなくてもいい保証金をかけたり。それでもダメで、不動産の人から「ミンさん、もし日本名があったらそれで契約したら簡単だ」と言われた。

 けど、私は役所に通称名を登録していなかったのでそれもダメ……結局、家主本人が私をネットで調べたらしく、この人ならということで、借りることが出来たのだが、大変苦労した。

 東京以外ではここまで厳しくないとも聞いている。

 当時、私は東京でも、故郷である関西弁を使っていた。

 東京に行けば東京弁をしゃべった方がいいかもしれません、最初はそう思いましたが、私の頭の中には日本語と韓国語が存在していて、その中で関西弁と東京弁とを使い分けるのがめんどくさくなって、それで伝わったらいいやと思い、関西弁で話すことにした。

 そうしたら、結構言われた。関西弁似合わないとか。関西弁もまねされた。まあ、下手でそれが面白かったりするのだが。

 あげくの果てには飲み屋やバーで、知らない客から文句言われたり。もしかして私の職業が韓国伝統音楽家で、それにプラスして様子があまりにもカッコよくシュッとしていたのでイメージと合わなかったのだろうか。(←ココ笑うところです)

 美人女優さんたちもみんな共通語です。これは方言を使うと美人ではないという潜在的価値観なのでしょうか。

 なんかおかしい。

Franzi/Shutterstock.com

首都の人は外国語が下手?

 首都っていう言葉も、普段よくひっかかるんですが。

 別に方言を使おうが、共通語を使おうがどっちでもいいのだが、とにかくそこから発生する差別はやめないと。首都は人が多いし、なんでも集まっているので便利。だからといって上ではない。地方が下でもない。

 なのになんでそんなに首都人たちは威張るのでしょうか? 地方出身の政治家も、成り上がりを夢見てるのなら、堂々と方言を使えばいいのに。みんな標準語?! 東京弁になってる。もうそこで、弱いなあって思ってしまう私。

 外国語の発音が下手なのは、もしかして首都人に多いのではないかな。

 なぜかって? それはほかの地の人たちは、自分の出身地の言葉と共通語の二つを常に意識しているから、普段からイントネーションを訓練しているのでしょう。だから比較的に外国語の発音がいいのではないかと。

 芸人やアーティストも、地元で売れて首都で売れて2回成功しなければいけません。ダウンタウンも千鳥もさんまさんでさえも一度大阪で売れてから、東京でまた1から始めた。

 首都人は1回でいい。だから地方出身者たちはなんだか強いでしょ。

 なんかフェアじゃないんだよなあ、仕方ないんでしょうけど、まあ何度も努力しチャレンジでき、素晴らしい経験を持てることが1番の財産でもありますが。

 こんなことも考えてみたり。なんで私の先祖は首都人で成功者ではなかったのか。そしたら生活も何もかも一からやらなくてもいいのにと。

 首都には全国から若者たちが夢をもってたくさん上京してきます。

 で、みんな一からそこでスタートするのです。大変です。人生のターニングポイントです。

 それを温かく迎えるか、厳しく突き放すかは、首都の人たちにかかっているのです。

 私はこの「首都=中心=上」という意識がどうも好きではありません。上り下り(のぼりくだり)ともいうじゃないですか。韓国でも同じ表現がありますが、こんなことからも、格差や差別が生まれるかもしれませんし。

rob zs/Shutterstock.com

大阪人と韓国人は全然似ていません!

 東日本大地震の際、当時の松本復興大臣の発言には、腹が立った。被災地宮城県を訪れ、会談を待たされたということで、わざわざ来てやったみたいに、先に部屋に自分が入ってからお客さんを呼べだの、「ちゃんとやれ、じゃないとやってやらない」などの命令口調。何をしに行っているのか。地震後間もない被災地での終始、上からの物言い。どういう神経で、こう行動ができるのか信じられない。

 パククネ前大統領の弾劾事件のもう一人の主人公チェスンシル。その娘チョンユラがSNSで「金持ちの家に生まれるのも実力よ!」って大衆に向かって反撃。それ以上に炎上したのも思い出す。

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