メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

「演劇はなぜ存在するのか」を問いながら

コロナ禍の中で考える、演劇の現在と未来【上】

瀬戸山美咲 劇作家・演出家

初めて足を踏み入れた議員会館

 その頃、8月におこなう予定だった自分のカンパニーの公演の中止を決めた。いつもより規模の大きい劇場での公演だったため、感染症対策を十分に取りながら上演することは困難だと判断した。また、公演直前に中止になった場合、大きな負債を抱えることが見えていた。間も無く、ほかにもかかわっていた公演がいくつか延期・中止となった。

 それでも劇作家は未来の仕事を進めることができる。公演中止になって苦しかったのは、俳優やスタッフなど現場がなければ仕事自体がなくなる人たちだ。

 その頃、私は週に1回、リモートで身近な俳優やスタッフたちとただ話をする会をしていた。緊急事態宣言によりアルバイトも減ってしまったという俳優の声を聞き、早急に何とかしなければならないと思った。たとえば、演劇の収入とアルバイトの収入合わせて月15万円で生活していた俳優の収入が10万円になった場合、持続化給付金の対象にもならない。地元に帰った、劇団を解散した、などの声も聞こえ始めた。

 4月、私も所属する日本劇作家協会、それから日本演出者協会、日本劇団協議会が中心になり、政府に支援を求める演劇緊急支援プロジェクトが立ち上がった。観客を含めたすべての人たちに向けて署名活動を開始し、舞台監督・美術・照明・音響・制作などの各スタッフ団体や児童演劇・観劇サポートの団体など約30団体も参加することになった。

 同じ演劇業界とはいえ、職種を超えて横断的につながることはこれまでなかったと思う。それから、同じく署名やクラウドファウンディングの活動をおこなっていたミニシアター支援の「SAVE the CINEMA」とライブハウス・クラブ支援の「Save Our Space」と合流し、演劇・映画・音楽の三者合同キャンペーン「#WeNeedCulture」を立ち上げた。

 第二次補正予算が決まる直前の5月22日、文化庁・文部科学省・経済産業省・厚生労働省に要望書を提出し、前後してWEBシンポジウム、リレートーク番組をおこなった。その後、予算が成立した後は具体的な内容について文化庁・財務省、そして各党の議員のみなさんと意見交換を重ねた。

拡大政府に要望書を手渡す日本劇作家協会会長の渡辺えりさん=2020年5月22日、東京都千代田区の衆議院第1会館

 こうして、文化芸術活動の継続支援事業が決まり、3回にわたる募集が始まった。フリーランスのアーティストが受けられる支援だ。しかし、自己負担金が必要だったり申請が複雑だったりと決して使い勝手がよいものではなかった。その後も制度の改善を訴え、4回目の募集もおこなうことになり先頃締め切られた。さらに、第三次補正予算による支援についても、議員・省庁のみなさんと意見交換を続けている。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

瀬戸山美咲

瀬戸山美咲(せとやま・みさき) 劇作家・演出家

1977年生まれ。2001年、演劇カンパニー「ミナモザ」を旗揚げし、現実を通して社会と人間の関係を描く作品を発表。16年、パキスタンで起きた日本人大学生誘拐事件を描いた『彼らの敵』が読売演劇大賞優秀作品賞。19年『夜、ナク、鳥』『わたし、と戦争』、20年『THE NETHER』で同優秀演出家賞受賞。20年芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。ラジオドラマの脚本も手がけ、16年、FMシアター『あいちゃんは幻』で放送文化基金賞脚本賞。映画『アズミ・ハルコは行方不明』『リバーズ・エッジ』などの脚本も手がける。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

瀬戸山美咲の記事

もっと見る