メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

劇場、それは精神を守る場所

コロナ禍の中で考える、演劇の現在と未来【下】

瀬戸山美咲 劇作家・演出家

「能」を翻案し、現代を描く

拡大現代能楽集Ⅹ『幸福論』・壱 『道成寺』(瀬戸山美咲作・演出)=細野晋司撮影

 もうひとつの作品の現代能楽集X『幸福論』は狂言師の野村萬斎さんが監修する、能をベースに現代劇を創作・上演するシリーズだ。

 今回は、劇作家の長田育恵さんが『隅田川』を、私が『道成寺』を翻案し、両方の演出を私がつとめた。

 企画が立ち上がった頃は、コロナの気配もなく、私たちは気になる謡曲をそれぞれ持ち寄り、そこに共通のキーワードである「幸福」を見つけた。

 コロナウイルスによって社会の格差は広がってしまったが、その前からすでに日本は明確に格差社会だった。現代版『道成寺』では経済的に充足しながらも幻の幸福を求める家族が破滅する姿を、現代版『隅田川』では社会の網目からこぼれてしまった女性たちが出会い、本当の幸福の入り口に立つまでを描いている。ふたつとも直接的にコロナウィルスについて描いてはいないが、2020年を象徴する作品になったと思う。

世田谷パブリックシアター企画制作
現代能楽集X『幸福論』 壱『道成寺』・弐『隅田川』
 
2020年11月29日~12月20日 東京・シアタートラムで上演
 世田谷パブリックシアターの芸術監督・野村萬斎が企画した古典を踏まえて新たな創作をするシリーズ「現代能楽集」の10作目。

 『道成寺』は、両親は経済的に成功をおさめ、息子は医学生という一見恵まれた家庭の内側にある空洞と崩壊を見つめた作品。
 『隅田川』は、万引きで捕まった少女、彼女と向き合う家庭裁判所の調査官、独り暮らしの高齢者という3人の女性の思いと運命が交錯する物語。
 瀬奈じゅん、相葉裕樹、清水くるみ、明星真由美、高橋和也、鷲尾真知子が両作品に出演した。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

瀬戸山美咲

瀬戸山美咲(せとやま・みさき) 劇作家・演出家

1977年生まれ。2001年、演劇カンパニー「ミナモザ」を旗揚げし、現実を通して社会と人間の関係を描く作品を発表。16年、パキスタンで起きた日本人大学生誘拐事件を描いた『彼らの敵』が読売演劇大賞優秀作品賞。19年『夜、ナク、鳥』『わたし、と戦争』、20年『THE NETHER』で同優秀演出家賞受賞。20年芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。ラジオドラマの脚本も手がけ、16年、FMシアター『あいちゃんは幻』で放送文化基金賞脚本賞。映画『アズミ・ハルコは行方不明』『リバーズ・エッジ』などの脚本も手がける。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

瀬戸山美咲の記事

もっと見る