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[神保町の匠]2020年の本 ベスト1(上)

『鬼滅の刃』、『コロナ時代の哲学』、『自転しながら公転する』……

神保町の匠

*本や出版界の話題をとりあげるコーナー「神保町の匠」の筆者陣による、2020年「私のベスト1」を紹介します(計2回)。

井上威朗(編集者)
吾峠呼世晴『鬼滅の刃 23』(集英社)

 この作者、本作の連載前から「モノが違うのでは」という声を漫画編集者界隈から聞くことがありましたが、想像以上でした。中高年でも分かるようにたとえると、『北斗の拳』のテンションと、『デビルマン』の驚きと、『寄生獣』の完成度とを両立させた未曾有の作品です。作者が設定や自分の思いなどを23冊の単行本に隙間なく書き続けてくれたのも、追ってきた読者にとって泣けるほど嬉しいサービスに思えます。

 そして、この23巻で描かれた名エンディングは、登場人物のファンにとって悔しすぎる「その後」までも暗示しているのですが、それすら納得させる一貫した力強いメッセージは、素直に心を打つものでした。

 最後に、おそらく忖度の結果である初版395万部という部数決定が、書店店頭での混乱と大量の売り逃し、転売屋の跋扈、逆に電子書籍のさらなる普及という結果を招いたことは、ここで記録にとどめておくべきでしょう。

『鬼滅の刃』最終巻(23巻)の発売日、東京・渋谷の書店で=2020年12月4日拡大『鬼滅の刃』最終巻(23巻、集英社)の発売日に、東京・渋谷の書店で=2020年12月4日

小林章夫(上智大学名誉教授)
パニコス・パナイー『フィッシュ・アンド・チップスの歴史――英国の食と移民 』(栢木清吾訳、創元社)

パニコス・パナイー『フィッシュ・アンド・チップスの歴史――英国の食と移民 』(栢木清吾訳、創元社)拡大パニコス・パナイー『フィッシュ・アンド・チップスの歴史――英国の食と移民 』(栢木清吾訳、創元社)
 今年の1冊はイギリスの国民的食事の歴史。料理がまずいと定評のイギリスの食事だが、魚のフライとポテトフライは、誰もが口にする国民食。これがなければ、正に食べるものに困る。本書はその始まりから歴史を辿ったもの。もっと前に出ていてもいい本だが、ようやくその歴史が一般に紹介されたのは何よりも喜ばしい。翻訳も見事で、今年一番の収穫か。多くの読者に恵まれることを願ってやまない。

 だが、これでイギリス料理の評価が高まるとは思わないけれど、そんなことは気にする必要はない。これからもこの伝統は受け継がれるだろうから。

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