『鬼滅の刃』、『コロナ時代の哲学』、『自転しながら公転する』……
駒井稔(編集者)
ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン『2050年 世界人口大減少』(倉田幸信訳、河合雅司解説、文藝春秋)
都市化と女性の高学歴化による自立が進むと出生率が低下し、2050年には世界の人口は減少に転じるという結論には恐ろしいほどの説得力があります。それがまぎれもない自然史的過程であるという分析は、ただ少子高齢化がもたらす災厄を強調する類書とは一線を画しています。人類はこれからどう歩んでいくのかという壮大な問いを、著者たちは投げかけてくるのです。
今野哲男(編集者・ライター)
大澤真幸・國分功一郎『コロナ時代の哲学 THINKING「O」016号』(左右社)
「ダイヤモンド・プリンセス号」を巡る防疫体制の不備と、船内管理の失態に始まったコロナ禍による混乱は、感染者数・重症者数・死者数など、日ごとの指標すべての最悪値を、不気味に更新しながら続いている。政府は、先行き不透明な実態にもかかわらず、国外産の新開発ワクチンだけが頼みの綱とばかりに、経済優先の貧相で酷薄な無策ぶりを変えていない。極言を許してもらえば、高齢者を始めとする重症者は、「死ぬに任せろ」と言わんばかりの様相だ。これが、新自由主義がはびこるにつれて度を強めてきた医療費削減と医療体制のスリム化という、悪しき国策の延長上にあることは、もう誰にも否めまい。
本書は、その確信犯的な政府の国策批判などは遥かに置き去りにして、コロナ禍を「世界政府」の創設に繋げようという桁外れの論考。その緻密な論理と歴史感覚に基づく思想の膂力(りょりょく)に、ゆうに「2020年 私のベスト1」と呼ぶに相応しい力強さを感じた。