『鬼滅の刃』、『コロナ時代の哲学』、『自転しながら公転する』……
主人公は30過ぎの独身で、一応は時間労働契約社員であり(つまり正社員でもバイトでもない)、親の介護で実家に帰っている。これが現代の女性の一つの典型である。面白く読めて考えさせる。そしてプロローグとエピローグが加わることによって、ぐんと奥行きが増し、今の日本に対し堂々と対峙する作品になっている。アッと驚く最後のオチも含め、巻を閉じてしばらくは呆然としていた。
松澤隆(編集者)
日本アーレント研究会編『アーレント読本』(法政大学出版局)
刺激といえば、歿後50年で熊野純彦『三島由紀夫』(清水書院)。熊野の著書で初めて完読、興奮。興奮といえば、歿後40年の『野呂邦暢ミステリ集成』(中公文庫)。初集成の魅力。自分が10代で初めて「成人向雑誌」の覚悟で買った「文藝春秋」の芥川賞作家が野呂。文藝春秋といえば(意外な?)長谷部恭男『戦争と法』。石川健治が國分功一郎との対談で激賞、購読。國分といえば、『はじめてのスピノザ――自由へのエチカ』(講談社現代新書)。既読感はあるが良書。ただ、<スピノザに対して、終始、批判的であった> (上掲書、國分のコラム)というアーレントに、いま惹かれる。