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[神保町の匠]2020年の本 ベスト1(下)

『芦部信喜 平和への憲法学』、『人新世の「資本論」』、『コロナの時代の僕ら』……

神保町の匠

鈴木久仁子(編集者、朝日出版社)
高野秀行著『幻のアフリカ納豆を追え!――そして現れた〈サピエンス納豆〉』(新潮社)

 7年に及ぶ世界の未確認納豆探求・完結編。納豆は世界のどこでも恥ずかしがり屋で「台所でもじもじ」してるが、心を開けばフレンドリー。そしてどの国の人もなぜか「自分たちだけが食べている臭くて美味い独特の伝統食品」と思い込む。そんな納豆が手繰りよせる奇縁の数々。味の素「辺境要員」でアフリカ納豆を調査する幼なじみ・健ちゃん(最後まで格好いい)。西アフリカでは高野さんと同じく世界の納豆に思いを馳せる研究者と出会い、軍と秘密警察に事情聴取され、韓国のある村の過去を探れば隠れキリシタンの生活を納豆が支え――。

 手間と時間をかけ納豆をつくる人達の動き、音。「これは納豆と言えるのか…?」。見届けるまでの不安と緊張感。そして匂いを確認できた時の喜び!

 視界が狭まっていた近頃、納豆からここまで行けるかと驚き、あの匂いを、出会ったことのない、それぞれ違う料理の数々でアフリカ、朝鮮半島から届けてくださることに感動しました。

高野秀行著『幻のアフリカ納豆を追え!――そして現れた〈サピエンス納豆〉』(新潮社)拡大『幻のアフリカ納豆を追え!――そして現れた〈サピエンス納豆〉』(新潮社)の著者・高野秀行(手にするのはアフリカ納豆)

野上暁(評論家、児童文学者)
斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)

 「人新世」とは、人類の活動の痕跡が地球の表面を覆いつくし、地質学的に新たな時代に入ったとしてノーベル化学賞受賞のパウル・クルッツェンが命名したという。人新世の気候変動はすでに世界各地に異変を起こし地球の破滅に向かう。国連が掲げた「SDGs」(持続可能な開発目標)も気候変動を止めることなどできないと著者はいう。

 グローバル化された資本主義の下では、先進国は開発途上にある国々の低賃金労働力や自然資源やエネルギーを収奪することによって豊かな生活を保障されてきた。ここで犠牲を強いられ搾取の対象となってきた労働者も地球環境さえも使いつくした資本主義はどこに向かうのか。ここで著者は、晩期マルクスの思想の中から危機解決のヒントを引き出し、「脱成長コミュニズムが地球を救う」と提言する。文明崩壊の危機をどう乗り越えるかを提示する、コロナ禍で読んだ刺激的な一冊だ。

斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)拡大『人新世の「資本論」』(集英社新書)の著者・斎藤幸平

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