時代を映し、参拝客は増え続けるが……
2021年01月01日
私たちは、だれも経験したことのない、コロナ禍での新年を迎えた。そして、初詣も「三密」を避け、新しい生活様式が求められている。
例年、有名神社仏閣には、たくさんの初詣客が訪れ、境内は人で一杯になる。明治神宮、成田山新勝寺、川崎大師平間寺などは、三が日だけで約300万人が訪れ(2009年度、警察庁調べ。2010年以降は調査をしていない)、まさに密集、密接の状態になる。
コロナ禍の中での新年であり、参拝客は減るであろうことは予想されている。それでも、かなりの混雑具合になることは避けられないであろう。
こうした中、全国の寺社では様々な対策をたてて、コロナ禍で迎える新年の準備をしてきたようである。
マスク着用や大声を出さないことを呼びかけるのは当然として、分散参拝を呼びかける寺社も多い。初詣は節分までの間にという提案や、暮れの内にお参りを行う「幸先詣(さいさきもうで)」という新しい提案もなされてきた。
ちなみに初詣は、お寺ではなく神社にお参りするものと考えている人も多いが、前述の成田山や川崎大師はお寺である。歳神(としがみ)を迎えるのが新年だとすると、神社にお参りするのが自然だと思うが、ほとんどの人はあまり気にしていない。日本は、神仏習合の長い歴史を持ち、民間信仰としてはあまり神仏を区別していない。そのため初詣は、神社に行く人もいれば、お寺に行く人もいるということになる。
多くの人が三が日に初詣をするのは、こんな時代でも、まだまだ神仏が大切にされていることを示している。新年に寺社にお参りし、1年間の無病息災や商売繁盛を祈ることで、清々しい気持ちになっている人は少なくないだろう。
ところがこの初詣、日本古来の習慣というわけでもないという。
近年、神奈川大学の平山昇准教授が、明治時代に発行された新聞などの資料を詳細に調べて、初詣の習慣が明治中期以降に一般化して、広まってきたことを明らかにしている(『鉄道が変えた社寺参詣――初詣は鉄道とともに生まれ育った』交通新聞社新書)。
平山准教授によると、初詣の一般化には、鉄道の開業が一役買っているという。特に、鉄道が家から距離のある寺社への参拝を可能にしたこと、また鉄道会社が新聞広告等で沿線の有名寺社への初詣を勧めるキャンペーンを行ったことが、大きく影響しているようだ。
ちなみに明治期には、俳句で「初詣」という季語を使った句がほとんど無く、大正時代以降になってようやく頻繁に使われるようになったらしい。
この有名寺社への「初詣」が一般化する前は、恵方詣と言って、その年の恵方(縁起のよい方角)にある寺社へのお参りをするという習慣があったという。毎年、お参りする寺社が変わるというのは、沿線の寺社にお参りをして欲しい鉄道会社にとって都合が悪かったので、恵方にある寺社でなく、毎年決まった神社でもよい初詣という考え方を広めていったようだ。
こうして広まった初詣の習慣であるが、それから100年以上たった現代でも、衰える気配が無い。
読売新聞は、過去10回、宗教と宗教行為について全国世論調査を実施している。
その中で、「宗教に関することの中で、現在、あなたがなさっているものは何ですか」と、いくつかの選択肢の中から選ばせる設問がある。選択肢には「正月に初詣」という項目があるが、これを選んでいる人は、昭和54(1979)年の56.0%から、平成20(2008)年の73.1%まで上がり続けている。
つまり、初詣をする人は、平成の時代になっても、増え続けてきたということだ。
日本の神社は、地域社会と大きな関わりを持ってきた。
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