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コロナ禍の初詣はどこへ行く?

時代を映し、参拝客は増え続けるが……

薄井秀夫 (株)寺院デザイン代表取締役

鉄道が初詣を普及させた?

 多くの人が三が日に初詣をするのは、こんな時代でも、まだまだ神仏が大切にされていることを示している。新年に寺社にお参りし、1年間の無病息災や商売繁盛を祈ることで、清々しい気持ちになっている人は少なくないだろう。

 ところがこの初詣、日本古来の習慣というわけでもないという。

 近年、神奈川大学の平山昇准教授が、明治時代に発行された新聞などの資料を詳細に調べて、初詣の習慣が明治中期以降に一般化して、広まってきたことを明らかにしている(『鉄道が変えた社寺参詣――初詣は鉄道とともに生まれ育った』交通新聞社新書)。

 平山准教授によると、初詣の一般化には、鉄道の開業が一役買っているという。特に、鉄道が家から距離のある寺社への参拝を可能にしたこと、また鉄道会社が新聞広告等で沿線の有名寺社への初詣を勧めるキャンペーンを行ったことが、大きく影響しているようだ。

 ちなみに明治期には、俳句で「初詣」という季語を使った句がほとんど無く、大正時代以降になってようやく頻繁に使われるようになったらしい。

 この有名寺社への「初詣」が一般化する前は、恵方詣と言って、その年の恵方(縁起のよい方角)にある寺社へのお参りをするという習慣があったという。毎年、お参りする寺社が変わるというのは、沿線の寺社にお参りをして欲しい鉄道会社にとって都合が悪かったので、恵方にある寺社でなく、毎年決まった神社でもよい初詣という考え方を広めていったようだ。

1932年 明治神宮の初詣  
写真説明 初詣でにぎわう明治神宮=新聞聯合 拡大1932年、初詣の参拝客でにぎわう明治神宮=新聞聯合

 こうして広まった初詣の習慣であるが、それから100年以上たった現代でも、衰える気配が無い。

 読売新聞は、過去10回、宗教と宗教行為について全国世論調査を実施している。

 その中で、「宗教に関することの中で、現在、あなたがなさっているものは何ですか」と、いくつかの選択肢の中から選ばせる設問がある。選択肢には「正月に初詣」という項目があるが、これを選んでいる人は、昭和54(1979)年の56.0%から、平成20(2008)年の73.1%まで上がり続けている。

 つまり、初詣をする人は、平成の時代になっても、増え続けてきたということだ。

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筆者

薄井秀夫

薄井秀夫(うすい・ひでお) (株)寺院デザイン代表取締役

1966年生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)。中外日報社、鎌倉新書を経て、2007年、寺の運営コンサルティング会社「寺院デザイン」を設立。著書に『葬祭業界で働く』(共著、ぺりかん社)、 『10年後のお寺をデザインする――寺院仏教のススメ』(鎌倉新書)、『人の集まるお寺のつくり方――檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか』(鎌倉新書)など。noteにてマガジン「葬式仏教の研究」を連載中。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです