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50年代の「野獣」を蘇らせたリップ・ヴァン・ウィンクルの物語

【2】「野獣死すべし」の原作を読んでみた

中川文人 作家

同人誌から生まれた名作

 ワシントン・アーヴィングが「アメリカ文学の父」ならば、大藪春彦は「日本ハードボイルド小説の父」である。日本のハードボイルの歴史は大藪春彦なくしては語れない。大藪春彦の没後に創設された大藪春彦賞も、優れたハードボイルド小説に与えられる賞である。

 大藪春彦の生年は1935年。同じ歳の作家に大江健三郎がいる。

 作家デビューは早稲田大学在学中の1958年。大江健三郎が芥川賞を受賞した年である。大江は東大新聞の懸賞小説から世に出たが、大藪の出発点は早稲田大学の同人誌。同人誌に寄稿した小説が江戸川乱歩の目に留まり、乱歩が編集長を務める文芸誌『宝石』に掲載されたのだが、そのデビュー作が『野獣死すべし』である。

拡大大藪春彦=1981年

 ちなみに、イギリスの推理作家ニコラス・ブレイクが1938年に発表した『THE BEAST MUST DIE』も『野獣死すべし』という邦題で出版されている。そして、この邦題をつけたのも江戸川乱歩である。乱歩は『野獣死すべし』の誕生に二回、立ち会っているのだ。

 さて、デビューの翌年、1959年、『野獣死すべし』は仲代達矢主演、須川栄三監督で映画化され、

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筆者

中川文人

中川文人(なかがわ・ふみと) 作家

1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。本の情報サイト『好書好日』で「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。総合誌『情況』にてハードボイルド小説「黒ヘル戦記」を連載中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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