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【公演評】雪組『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~/『シルクロード~盗賊と宝石~』

ラストステージはベートーヴェンで完全燃焼!望海風斗こそがフォルティッシッシモ!!

さかせがわ猫丸 フリーライター


 雪組公演、ミュージカル・シンフォニア『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~と、レビュー・アラベスク『シルクロード~盗賊と宝石~』が、1月1日に宝塚大劇場で初日を迎え、2021年の幕開けを飾りました。音楽史に革命を起こしたクラシックの巨匠ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンを描いたこの作品で、雪組トップスター望海風斗さんが退団します。圧倒的歌唱力で、雪組のみならず宝塚歌劇全体を牽引してきた望海さん。同時退団する相手役の真彩希帆さんとは、歌劇団史上に誇る名歌手コンビとなりました。

 最後に挑む舞台は、聴力を失った天才音楽家と“謎の女”。絶望と孤独の中、彼はどのようにして歓喜の第九を完成させたのか――。独特の世界観で熱狂的ファンを持つ上田久美子先生が、斬新な演出で2人の魅力を余すところなく引き出しています。(以下、ネタバレがあります)

望海が繰り出す圧巻の指揮

拡大『f f f -フォルティッシッシモ-』公演から、ベートーヴェン役の望海風斗=岸隆子 撮影

 「エリーゼのために」「運命」「田園」「月光」そして「交響曲第9番」……永遠に継がれていく数えきれない名曲の陰で、ベートーヴェンは音のない世界をどう生きていたのでしょうか。

 オープニングはコミカルな天国の入口から。バリバリのシリアスを予想していたら意表をつかれます。そこでは、ヘンデル(真那春人)、モーツァルト(彩みちる)、テレマン(縣千)が、足止めを食らっていました。天国行きか地獄行きか、審判を下すケルブ(一樹千尋)は、彼らの後継者が“音楽”を何のために使うのか見極めてからだと告げます。

 下界では、その後継者ルートヴィッヒが渾身の指揮で、ナポレオンは戦闘で、ゲーテが文学で――彼らは天をも突きあげる勢いで人間の勝利を叫んでいたのでした。

 ――19世紀始め、フランス革命後。ウィーンでは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(望海)の指揮によるコンサートが熱狂のうちに幕を下ろした。楽屋を訪れたオーストリア皇帝から賞賛されても、貴族にこびないルートヴィヒは、この交響曲「英雄」はナポレオン・ボナパルト(彩風咲奈)に捧げるものだと言い放つ。危険分子として厳しい目を向けられるが、音楽家としての自信を深めたルートヴィヒは、伯爵令嬢ジュリエッタ(夢白あや)に求婚。返事はゲーテ(彩凪翔)作「若きウェルテルの悩み」の上演の後に聞くことを告げた。

 望海さんは、音楽室で見た肖像画のように、片側にウェーブをきかせたヘアスタイルがよく似合います。エネルギッシュに指揮を振る姿は、まさに圧巻の一言。躍動する肉体は、これで1か月持つの?と、思わず心配になってしまうほど。無人のオケボックスを利用した演出も、熱狂を増幅させています。それだけに、その後に襲い掛かる悲劇とのコントラストがより一層、胸に迫ってくるのでした。

 上田久美子先生の作品は、いつも沈黙が胸にささります。以前、朝夏まなとさんにインタビューした際、「2000人以上お客さまがいるはずの劇場で、今、自分一人しかいないと感じる瞬間がある」と話されていたのが印象的でした。今回もまた、そんな瞬間があります。

 もし作品が難しいと感じることがあっても、緩急ある望海さんの芝居で、そんな瞬間をともに味わえるのもまた、演劇の醍醐味なのかもしれませんね。

◆公演情報◆
『f f f -フォルティッシッシモ-』
『シルクロード~盗賊と宝石~』
2021年1月1日(金)~2月8日(月) 宝塚大劇場
2021年2月26日(金)~4月11日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~
作・演出:上田久美子
『シルクロード~盗賊と宝石~』
作・演出:生田大和

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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