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角川武蔵野ミュージアム――本棚の雑木林へ

渡部朝香 出版社社員

巨石と神社――いかがわしさをあえて打ち出した施設

 KADOKAWAが所沢浄化センターの跡地に新社屋を建設し、本社機能の半分を移転すると発表したのは、2018年のことだった。KADOKAWAと所沢市は産官共同のプロジェクト「COOL JAPAN FOREST 構想」を立ち上げ、その拠点となる、ところざわサクラタウンが竣工したのは、2020年の4月のこと。

 巨大な施設内には書籍の製造・物流工場もある。KADOKAWAが印刷と流通を自社で担う方向へ大きく舵を切ったことは、出版業界でも耳目を集めている(「KADOKAWAが埼玉・所沢で建設中のデジタル書籍製造・印刷工場、フル稼働の25年3月期にEBITDA25億円効果見込む」LOGI-BIZ online)。

 住宅や畑、企業の社屋が混在し、高い建物はほぼない東所沢の風景にあって、ところざわサクラタウンの一画は、特異な存在感を放って空を遮っていた。

 角川武蔵野ミュージアムは、オフィス(約1000人がワンフロアで働けるという広大な!)やアニメホテル、飲食店の入った複合ビルを通り抜けた先にある。視界に入ったそれは、巨石だった。写真に収めることが難しいほどの大きさだ。

=撮影・筆者拡大角川武蔵野ミュージアムの概観=撮影・筆者

 ミュージアムの向かいには、武蔵野坐令和神社(むさしのにますうるわしきやまとのみやしろ)という神社も創建されていた。巨石と神社。信仰の空間のようでありながら、歴史をともなわないそれは、どこかキッチュさが否めない。だが、ミュージアムに入ってみて、そんなふうに評されるのはお見通しで、いかがわしさをあえて打ち出しているのがこの施設なのかもしれないという思いが強まった。

 ミュージアムは5階のフロアからなる。1階はマンガ・ラノベ図書館と、特設展を開催するグランドギャラリー。2階はショップやカフェ、3階はアニメミュージアム。4階には「エディットタウン」「荒俣ワンダー秘宝館」「本棚劇場」、5階には「武蔵野回廊」「武蔵野ギャラリー」という構成だ。

 角川武蔵野ミュージアムの施設概要には、こうある。

 「図書館・美術館・博物館が融合した文化複合施設。編集工学者・松岡正剛、博物学者・荒俣宏、建築家・隈研吾、芸術学・美術教育の神野真吾による監修のもと、メインカルチャーからポップカルチャーまで多角的に文化を発信する」

 「ポップカルチャーまで」といま掲げるからには、「クール・ジャパン」が意識されているのだろう。ミュージアムも、マンガやアニメに力点が置かれている。しかし、実際、過去にさかのぼってみれば、角川書店が、雑誌、書籍、映画など、大衆文化を牽引してきたことは、わたし自身の個人的な記憶からも容易にたぐれる。

 チケットにはパスポートもあるが、種別によっては入れるエリアが異なる。わたしが買ったチケットは、1階のグランドギャラリーと、4階・5階が見られるスタンダードチケットだった。

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筆者

渡部朝香

渡部朝香(わたなべ・ともか) 出版社社員

1973年、神奈川県生まれ。1996年に現在の勤務先の出版社に入社し、書店営業、編集、営業(内勤事務)を経て、2014年夏より単行本の編集部の所属に。担当した本は、祖父江慎ブックデザイン『心』、栗原康『村に火をつけ、白痴になれ』、石内都『フリーダ 愛と痛み』、ブレイディみかこ『ヨーロッパ・コーリング』、福嶋伸洋『リオデジャネイロに降る雪』、佐藤正明『まんが政治vs.政治まんが』、赤坂憲雄『性食考』など。