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男役道の集大成、退団公演「成し遂げる」/望海風斗

雪組2年連続の本拠地正月公演

日刊スポーツ新聞社・村上久美子


【日刊スポーツ・2020年12月24日付紙面(大阪本社発行版)より】

 コロナ禍で半年遅れ、元日に退団公演開幕を迎えた雪組トップ望海風斗。「『fff-フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~」「シルクロード~盗賊と宝石~」は、雪組2年連続の本拠地正月公演になった。今年の締め、新年の抱負には「成し遂げる」をあげた。兵庫・宝塚大劇場は2021年1月1日~2月8日、東京宝塚劇場は2月26日~4月11日。あこがれ続けた男役道を完遂して来春、入団19年目で退く。

              ◇   ◇   ◇

拡大「成し遂げる」退団公演へ思いを込めて臨む雪組トップ望海風斗(撮影・村上久美子)
 本拠地に別れを告げる2021年2月、退団会見からちょうど1年になる。

 「お稽古も、ひとつひとつのことが、これが最後なんだなと。(延期の)期間に振り返ることができ、寂しいよりも今までいろんな経験をさせてもらったこと、今(稽古)出来ることが幸せだな-と」

 来春で19年目。小学時代からあこがれた宝塚で、最後の役はベートーベンだ。

 「あまり最後と思わずにやりたいし、男役として挑戦し続けたい。新たな挑戦の扉を1枚、用意していただけた。強い気持ちで」

 比類なき歌唱力を誇る望海。天才音楽家のイメージは「皆さんもそうでしょうけれど、気難しいという感じ(笑い)。笑っているよりも怒っていたり、苦悩していることの方が多いんじゃないか」と笑う。

 相手役の真彩希帆も同時退団する。代表作「ファントム」で見せたトップコンビの圧巻の歌唱はファンはもちろん、宝塚の歴史に残るものになった。

 「(コンビで)最後の作品になるので、思いがこみ上げることもあるとは思いますが、この作品の中で、いい感情の流れになったらいいなと思います」

 今回、真彩は「謎の女」。関係性にも深みがある。

 「見終わったあとに、ふに落ちていただきたい。人として、自分自身と向き合う大切さを。(トップ)3年余り、経験させてもらって、1人ではなくコンビだから感じたこともある。それがすべて集約されているような関係性です」

 ベートーベンに例えて言えば、宝塚との出合いこそが「運命」だった。小学時代に、涼風真世の退団公演「グランドホテル」を東京宝塚劇場で見て、心の中で「ジャジャジャジャーン」と音楽が響いたという。

 「(舞台の)回転扉から次々に麗しい方々が出てくる。こんな人たち、世の中に存在するんだ! と衝撃で。天海祐希さんが出てきてノックアウト(笑い)」

 もはや「ここ以外の世界」は考えられず、宝塚音楽学校を受験して合格した。

 「よくその勢いのままやってこられたな-と。ちょっとでも、おじけづいていたら入れなかったかも。あの時、一員になりたいと思った気持ちのままにきた」

 花組から雪組へ移ってトップに、転機は組替え。「100周年の年に組替え。経験すべてがターニングポイントだった」。新たな組で新たな自分を発見した。

 コロナ禍、ファンと接する機会は激減、あらためて「見えない絆」も感じ、舞台を通して恩返しを誓う。次期トップは雪組育ちの彩風咲奈に決まった。

 「サキちゃん(彩風)がトップになって、下級生として雪組にいてみたいなと思った。本人にしたら、すごい迷惑だと思うんですけど(笑い)」

 雪組を知る後輩は「ずっと支えてもらい、頼もしい存在」。それゆえ「雪組でトップになってどう芯(中心)としてやっていくんだろう」と思いをはせる。「サキさん! ついて行きますって! 思う」。先輩としては「今(2番手)の時期を楽しんで」と伝えた。

 2021年。新たな年の幕が開ければ、男役人生の最終カーブに入る。

 「21年の言葉は『成し遂げる』。(公演そのものが)幸せなこと。公演を成し遂げる強い思いを持って、同時に、宝塚人生も成し遂げるという思いを持って」

 見事に成し遂げ、新たな人生の章へと進んでいく。

 ベートーベンを演じる芝居では、人柄よりも「どういう精神で、どういう魂をもって、音楽を生み出していったか」を表現する。

 「私自身も奥深い、すべてそぎ落とした状態の中で出てくる感情を、シンプルにお客様にお届けするのが今回の課題。生み出す中で、愛情を感じています」

 展開は、望海自身も驚いた。「台本をいただき、(演出の)上田先生の頭の中の想像力のすごさに言葉も出なかった」そうだ。

 「もちろん怒り、魂の叫びから出てくる音楽もありますが。今まで演じた役が悲劇に走っていく役が多かったので、そうならないよう。温かいもの、未来への明るさを失わないように」

 コメディーでも、ヒューマンでもなく「喜ぶ劇って書いて『喜劇』。そのイメージです」。オリジナル曲も交ぜ、ベートーベンの残した名曲も多数ある。コロナ禍に揺れる新年の幕開け作には、意義も感じる。

 「この時代に寄り添うというより、人間の持つ強さを、私たちも台本、役からエネルギーをいただいていて新しい年を迎え、お客様とも、もう1度エネルギーを共有できたら」

 ショーは「シルクロード」がテーマ。衣装も見どころのひとつだ。

 「あまり経験のないアラビア系とか、コスチュームも楽しんでいただきたい。大まかなストーリーに沿って進み、場面ごとの小さなストーリーもあります」

 半年遅れて迎える退団公演。待ってくれていたファンへの感謝も尽きない。

 「(延期に)すごく心配してくださった。今(ファンに)直接、自分の気持ちを伝えられないことが、すごく心苦しい。でも、たいへんな世の中で、1歩ずつでも前進できることがありがたい。宝塚へ、応援してくださった方々へ、仲間への思いを再確認し、退団公演を迎えられて幸せです」

 サヨナラショーの構成は「マル秘です」と言い、笑った。現在は本編の仕上げに専心し「お楽しみにしていただけたら」と続けた。恒例サヨナラパレードの方向性も見えない。「思った形ではないかもしれません。今まで通り-とは、私も思っていません。でも、この時にしかできないこともある。精いっぱいのことを、いろんな方々が考えてくださっている。ファンの方も悲しまないでほしい。それが一番心配ですね」とメッセージを送った。

◆ミュージカル・シンフォニア「fff-フォルティッシッシモ-」~歓喜に歌え!~(作・演出=上田久美子) 主人公はベートーベン。失恋、孤独、失聴…不運に見舞われながらも、至上の喜びを歌う「第九」を完成させた。聴力を失った天才音楽家と、現れた「謎の女」との不思議な関係をまじえて描く。

◆レビュー・アラベスク「シルクロード~盗賊と宝石~」(作・演出=生田大和) 陸と海とで西欧とアジアを結びつけてきた「シルクロード」がテーマ。青いダイヤモンドを手にいれた盗賊は…。ストーリー仕立てで、宝石のきらめきの中に宿る“記憶”をたどる旅を、エキゾチシズムに表現する。CM、アニメ、映画音楽も手掛ける菅野よう子氏からの楽曲提供も。

☆望海風斗(のぞみ・ふうと)10月19日、横浜市生まれ。03年入団。花組配属。09年「太王四神記」で新人初主演。14年11月に雪組。17年7月に同トップ。「ファントム」は圧巻の歌唱力で好評を得た。今年の正月も本拠地公演が雪組で主演。身長169センチ。愛称「だいもん」「ふうと」「のぞ」。

「宝塚~朗らかに~」はニッカンスポーツ・コムに連載中です。

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