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豪雪のソウル、マイナス19度の夜。私は車を放置して家路へついたが……

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

 1月6日。韓国全域の豪雪。久しぶりに大変な目にあった。

 前々から予定していた仕事関係の会議兼食事会がソウル屈指の繁華街・カンナムであった。そして夕方、車で出かけた。

 韓国はただいまコロナの影響で、防疫レベル3段階。食堂の営業時間は午後9時までで、5人以上の食事は禁止。知人の事務所で会議を終えて、5分くらいかけて車で食堂に向かい、そのお店の駐車場に車をとめて、入店。

 お店によっては一人一人、名前、住所、連絡先を紙に記入したり、スマホのネットで得られる自分用のQRコードを開いてお店のQR読み込みタブレッドにかざしたりします。または、お店が提示した電話番号に電話をかけるだけで、私の連絡先などの情報が登録され、入店が許可される。

 天気も良かったので、雪の心配はそっちのけで楽しく食事をしていると、外を見ると雪が……。わあー! 雪降ってるね! ってくらいで食事を続けていたら、すでに9時になっていた。

CJ Nattanai/Shutterstock.com

「今日中に車を動かすのは無理」

 お店を出る。なんと雪が短時間で10センチ以上も積もっているではないか!!

 大変だー!! 私は車で来ている。お酒を飲んだので、韓国では当たり前の代行運転を頼む予定だった。代行運転に電話をかける。受け付けはしてくれたが、今は運転手がいないという。普段こんなことはない。雪のせいだ。代行運転手も雪の中で運転をしたくない。安全のため運転をしないのである。

 この間も雪はどんどん降り続き、一緒に食事していた友人たちが、これはもう今日中に車を動かすのは無理だから、お店に言って、明日取りに来るようにした方がいいと言う。

 長年ソウルにいた経験から、あの豪雪での車の走行は無理だ。

Stock for you/Shutterstock.com

 外は白銀の世界。降り積もった雪の中をゆっくり歩いていると思い出した。高校生の時、朝5時に起きて家を出ると、まだ誰も踏んでいない雪を最初に踏むことが出来て足跡をつけるのだ。そしたら次の人はたいていその足跡の上をなぞって歩く。その時に友達から雪で凍っている道の歩き方も教わった。

 地下鉄に乗ると、コロナ禍で最近はガラガラの電車の中も、この日は人がいっぱいだった。バスやタクシーは全滅なのでみんな地下鉄に群がったのだ。

 地下鉄での帰路は、乗り換えもあり、1時間くらいかかる、そして最寄りの駅から私の家までは徒歩20分くらい。外は約マイナス19度。下手すると、ヤバイ……。

 妻にメールする。カンナムがこういう状況だから、地下鉄に乗ったが、最寄りの駅から家までのタクシーはない。

 そっちはどう? と妻にメールを打つと、こっちは雪は降っているが、まだ大丈夫、運転可能だと返ってきた。

 私の家はイルサンという所で、豪雪のカンナムからは離れている。イルサンの方はもしかしたら大丈夫かな?という予感が当たった。それに妻は運転が非常にうまい。

 迎えの車に乗り、外を見ると道路は除雪車で雪が整理されていたが、歩道は雪でぐちゃぐちゃに荒れていた。この中で歩くと下手すれば、家まで小一時間はかかっていたかもしれない。マイナス19度の中は恐ろしい。

 やはり、バス・タクシーは全滅。妻が車で駅まで迎えに来てくれて助かった。家に帰れたのが本当にうれしかった。なにせ今年の韓国の冬は北極寒波がやってきているらしく、へたすると命取りになりかねない。

一夜明けて凍りきった車は……

 次の日、ニュースを見ると昨夜の豪雪の映像がエグかった。

 特にソウルのカンナムの道路でスリップしまくっている車の映像や事故のニュースが何度も流れた。もし私も車に乗っていたらと思うと鳥肌が立った。

 さて次は昨日置いてきた車を取りにいかねばなりません。

 朝10時くらいに昨日一緒した知人がわざわざ店の駐車場まで車を見に行ってくれたのだが、まだ雪が溶けていないので車を出すのは難しいかもと考え、とりあえず午後になって、気温の上がるのを待つことにした。少しでも気温が上がり、雪が溶けるのを期待する。

 しかし気温は上がらず、マイナス15度。これは難しい……。

 午後4時ごろ。その日も妻の車でカンナムまで行ってくれるというので、じゃあ、せっかくだから家族みんなでカンナムでご飯! カンナムは日本人にも人気の繁華街や洗練されたお店や格好良い建物が多い。

 大きい道路は整備されていて車の走行に問題ないが、お店までの路地は全然雪が溶けずに凍っているので、超徐行でいかないと危ない。

 やっとのことでお店へ到着したが、私の車はまるで氷河期に埋もれていたように凍っていた……。

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