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ミュージカル『パレード』が再び現代を映し出す

演出家、森新太郎が語る

山口宏子 朝日新聞記者

 ミュージカル『パレード』は、まるで現代の世界をそのまま映し出したような作品だ。ある事件をきっかけに、地域社会に偏見と差別の嵐が吹き荒れ、デマが飛び交い、独りよがりの正義感が暴走する。日本では石丸幹二主演で2017年に初演され、大きな反響をよんだ、この異色のブロードウェイミュージカルが、再び上演される。演出の森新太郎に話を聞いた。

台本を読んで、すぐに「やります」

ミュージカル『パレード』(2017年)、主人公のレオ(石丸幹二)は無実の罪で裁かれる=宮川舞子撮影

 『パレード』は1913年に、アメリカ南部の都市、ジョージア州アトランタで起きた現実の冤罪事件をもとにしている。南北戦争での南軍戦没者を追悼する記念日に、13歳の白人少女が殺された。すぐに逮捕されたのは、彼女が働いていた鉛筆工場の工場長レオ・フランク。彼は北部出身で、地元の裕福な一族の娘と結婚して南部にやってきたユダヤ人だった。

 少女の死を悲しみ、家族に同情する地域の人々の感情に、北部への恨み、ユダヤ人差別、金持ちへの反感などが重なり、大きなうねりとなる。レオの人格をおとしめる作り話が広がり、新聞記者や政治活動家がそれをあおる。住民の支持を得たい野心家の州検事がレオを追い詰め、無実のレオはついに死刑判決を受ける。

 森は、力強くかつ緻密な舞台作りで、いま最も注目されている演出家の一人だが、ミュージカルを手掛けるのは『パレード』が初めてだった。依頼を受けた時は、台本を読んで、即座に引き受けたという。

 「台本がすごく面白かった。特に、民衆が暴走してゆくところが、自分の関心と重なり、すぐに『やります』と手を挙げました。周囲の人から『普通は音楽を聴いてから決めるものだ』とあきれられましたが、それほど台本に強くひかれたのです。後から聴いた音楽が、これまた素晴らしかった。バラエティーに富んでいるのに、統一感があって、退屈な曲が一つもない。いやあ、ラッキーでした」

ミュージカル『パレード』

 作:アルフレッド・ウーリー
 作詞・作曲:ジョイソン・ロバート・ブラウン
 共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
 演出:森新太郎、翻訳:常田景子、訳詞:高橋亜子
 振り付け:森山開次、音楽監督:前嶋康明
 美術:二村周作、照明:勝柴次朗
 企画制作:ホリプロ

石丸幹二、堀内敬子、岡本健一、武田真治、
石川禅、坂元健児、今井清隆、福井貴一らが出演

【東京】 2021年1月17~31日 東京芸術劇場
【大阪】  2月4~8日 シアター・ドラマシティ
【名古屋】 2月13、14日 愛知県芸術劇場大ホール
【富山市】 2月20、21日 オーバードホール

ミュージカルへの「疑い」から、信頼へ

演出家、森新太郎
 ミュージカルではたいてい、最初に俳優が楽曲を練習する「歌稽古」が行われる。演出家は、それが一通りすんでから動きだすのが一般的だ。しかし、4年前、森は歌稽古の1日目から立ち会った。俳優からは、半ば冗談で「迷惑だ」という声があがったという。
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