大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター
演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ミュージカル界期待の若手スターが大役フェルセンに挑む
――甲斐さんは2020年『デスノート THE MUSICAL』で初舞台を踏み、ついで『RENT』ロジャー役と演じてきました。そして、今回の『マリー・アントワネット』では初めて、歴史物のグランドミュージカルへの出演となります。
こういう作品にいつか出たいとずっと思っていたんです。若くして切符をいただけたということで絶対に無駄にしてはいけないなと。『マリー・アントワネット』に出演したら、自分にとって引き出しが増えると思いますが、それ以上にこの作品をいかに素晴らしいものにするかを考えたいですね。今まで『デスノート』『RENT』で得たものが大きくて、それが『マリー・アントワネット』にも生きると思うんです。
――それはどんなところが?
『RENT』は(新型コロナウイルス感染症対策の影響で)公演が途中で中止になってしまったのですが、日本版リステージのアンディ(・セニョールJr)が「この終わり方はとても『RENT』っぽいね」と言っていたんです。RENTという言葉の意味は「借りる」「借り物」ということじゃないですか。人生というのはすべては借り物で、何もかもが自分のものではない。でも、自分が所有している間にどうするかが大切なんだと言われて、「ああ、深いな」と思いました。与えられた役、与えられた作品で、与えられた時間の中で何を残すか。特に今、コロナによって今まで以上に未来が約束されなくなっているから、自分がすべきことを考えるようになりました。
――先日『RENT』を観劇したのが偶然甲斐さんの誕生日で、カーテンコールで甲斐さんが挨拶されていたんです。そのとき「今はいろいろと大変な思いをしていらっしゃる方もいると思う。でも、僕らを見て生きる希望を持っていただけたなら、それが僕らの生きる希望になります」とおっしゃったのが印象的でした。
恥ずかしい(笑)、でも真実です。「心が救われた」という声をいただくと、そういう方たちのために僕らはやっているんだと思えます。『RENT』は途中で終わってしまって、観られなかった方たちには本当に申し訳なかったけれど、本番ができて感動してくれた方たちがいらっしゃった。僕らもその先へ繋がっていったと思うんです。頑張っている人を見たら頑張れる。だから、人って希望の与え合いなんですよね。
――もちろん観劇しているお客様も、役者さんが演じていることが力になっていますよね。
そうそう、本当に素晴らしい空間ですよね、エンターテインメントって。生きるか死ぬかとなったときにエンタメはいらないのかもしれないけれど、人間らしく生きることにはエンタメが必要だなと思うんです。笑って泣いて楽しんで。衣食住にエンタメが含まれてもいいんじゃないかと思うくらい。エンタメって命のロウソクに火をつける、酸素みたいな存在じゃないかな。この激動の時代に火を大きくしないと乗り越えられないから、やっぱりエンタメが必要だなと思います。
◆公演情報◆
ミュージカル『マリー・アントワネット』
遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」より
東京:2021年1月28日(木)~2月21日(日) 東急シアターオーブ
大阪:2021年3月2日(火)~3月11日(木) 梅田芸術劇場 メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出:ロバート・ヨハンソン
原作:遠藤周作「王妃マリー・アントワネット」
[出演]
花總まり/笹本玲奈(Wキャスト)、ソニン/昆 夏美(Wキャスト)、田代万里生/甲斐翔真(Wキャスト)、上原理生/小野田龍之介(Wキャスト)、原田優一、駒田 一、彩吹真央、彩乃かなみ、上山竜治、川口竜也 ほか
〈甲斐翔真プロフィル〉
2016年「仮面ライダーエグゼイド」でドラマデビュー。その後、ドラマ、映画などの話題作に出演。主な出演作品は、ミュージカル『デスノート THE MUSICAL』、『RENT』、ドラマ『花にけだもの』、『いつか、眠りにつく日』、映画『#ハンド全力』、『君が世界のはじまり』『シグナル100』など。
★公式twitter
★公式instagram
論座ではこんな記事も人気です。もう読みましたか?