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日本と韓国、演劇で結ばれた20年

現代戯曲のリーディングを重ねて【上】

石川樹里 翻訳、日韓演劇コーディネーター

2020年の韓国演劇上演ラッシュ

 昨年は、コロナ禍という未曽有の事態により、演劇界は厳しい状況に追いこまれた。2月末以降、日本も韓国も多くの公演が中止や延期になり、年間の公演数は例年の半分にも満たないほどだった。また感染拡大防止のため、海外への渡航と海外からの入国が制限され、実際の行き来を伴う国際交流はほぼ壊滅状態になった。

 そんな状況の中で20年の下半期には、私にとってうれしいニュースが次々に飛び込んできた。日本国内で、韓国戯曲の上演や韓国に関連した素材を扱った公演が相次いで上演されたのだ。

 9月に上演された青年劇場の『星をかすめる風』(イ・ジョンミョン原作小説、シライケイタ脚本・演出)を皮切りに、10月にはフェスティバルトーキョー(F/T)と京畿道立劇場が共同制作した『神の末娘アネモネ』(松井周作、イ・ホンイ翻訳、キム・ジョン演出)が、F/Tにオンラインで参加した。

 さらに名取事務所が『獣の時間』(キム・ミンジョン作、石川樹里翻訳、シライケイタ演出)と『少年Bが住む家』(イ・ボラム作、シム・ヂヨン翻訳、眞鍋卓嗣演出)を上演。11月には文学座の『五十四の瞳』(鄭義信作、松本祐子演出)、12月にはKAAT神奈川芸術劇場と東京デスロックの共同制作公演『外地の三人姉妹』(チェーホフ原作、ソン・ギウン脚本、石川樹里翻訳、多田淳之介演出)、そして流山児事務所の『客たち』(コ・ヨノク作、ホン・ミョンファ翻訳、シライケイタ演出)と続いた。

 これらの作品はどれも素晴らしい舞台成果を上げて、大手日刊紙の演劇評に取り上げられ、年末の2020年回顧欄でも言及された。

拡大名取事務所が上演した『少年Bが住む家』=坂内太撮影
 中でも評価が高かったのは、名取事務所の『少年Bが住む家』だ。中学時代に仲間と一緒に友達を殴って殺してしまい、保護観察処分を受けて20歳で自宅に戻った少年と、世間の冷たい視線に耐えながら暮らす家族の姿を細やかに描き、日本の観客にも同時代の物語として深い共感をもたらした。作品は文化庁芸術祭優秀賞を受賞し、翻訳者のシム・ヂヨンさんは小田島雄志・翻訳戯曲賞、演出した眞鍋卓嗣さんは紀伊国屋演劇賞の個人賞、読売演劇大賞の演出家優秀賞に選ばれた。

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筆者

石川樹里

石川樹里(いしかわ・じゅり) 翻訳、日韓演劇コーディネーター

ソウル在住。 日本と韓国で、戯曲翻訳、字幕製作、公演通訳、コーディネーター、ドラマターグなどを務める。日韓演劇交流センター専門委員、韓日演劇交流協議会専門委員。戯曲した翻訳は『鱈々(原作・プゴテガリ)』(イ・ガンベク作)、『ペール・ギュント』(イプセン原作、ヤン・ジョンウン脚色)、『青春礼賛』『ギョンスク、ギョンスクの父』『満州戦線』『哀れ兵士』(パク・クニョン作)、『渇愛』『獣の時間』(キム・ミンジョン作)、『カルメギ 가모메』『颱風奇譚』『外地の三姉妹』(ソン・ギウン作)ほか多数。共訳書に『韓国近現代戯曲選』(論創社)。『呉将軍の足の爪』(パク・ジョヨル作)の翻訳により2008年、第15回湯浅芳子賞受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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