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カナダで「死ぬ権利」の合法化を訴え続けたのは患者さんや家族だった

カナダ・アルバータ大学腫瘍学・緩和ケア医療部門臨床教授・樽見葉子さんに聞く(上)

鈴木理香子 フリーライター

患者や家族が幇助死を求めて訴訟に

――日本では、京都の事件のようなことがあっても法制化の議論は起こりません。

樽見 それはとても残念なことです。本当はこういう事件の後だからこそ、第二、第三の彼女のような人が出てこないためにはどうしたらいいか、事前意思表示を法的に尊重する制度や、事前意思表示に基づく治療差し止めを合法化することを、学会や議会で正式に議論することが必要です。カナダでMAIDが合法化されるにあたって大きな力となったのは、「死ぬ権利」を強く訴え続けた患者さんやその家族です。

Chinnapong/Shutterstock.com拡大Chinnapong/Shutterstock.com

――日本では自国で死ぬことを諦め、海外で最期を遂げた方もいます。

樽見 合法化される前のカナダでも、脊椎狭窄症の痛みから解放されるために、スイスで幇助自殺を選択した80代の女性がいます。

――カナダでは2016年にMAIDが法制化されました。

樽見 カナダでも長年、自殺幇助は犯罪行為とされていましたが、ALSによる筋力低下で自殺をする身体機能を失った44歳の女性が、1993年に自殺幇助による死ぬ権利を巡り、憲法改正を訴え訴訟を起こしました。最高裁では僅差で敗訴となりましたが、その後、先に挙げたスイスで死亡した女性の遺族と、もう一人のALSと診断された女性が幇助死による死ぬ権利を主張して訴訟を起こしました。

 そして2015年2月、カナダ最高裁が終末期の苦痛から解放されるための幇助死を禁止する法律を違憲とし、議会が医療幇助死の施行を2016年6月までにできるようにしなければならなくなったのです。

――患者さんの訴えが国を動かしたということですね。報告書を見ると MAIDを選ぶ人は年々増えていて、2016年後期は510人、17年前期は875人、17年後期は1086人、18年は1月から10月の数字ですが、2614人でした。

樽見 毎年、その年の全死亡者数の約4%がMAIDで亡くなっています。男女は半々で、平均年齢は70代前半。がんと診断された方がもっとも多く、神経難病、心疾患の順番になっています。実際、私はこの1カ月で100人以上の新規の患者さんを診ましたが、そのうちMAIDを希望する患者さん3人の緩和ケアを受け持ちました。

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筆者

鈴木理香子

鈴木理香子(すずき・りかこ) フリーライター

TVの番組製作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆