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マスク着用を拒否する人は逮捕すべき! なのだろうか……

政治の怠慢が招いた「正しさに対するバックラッシュ」

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 マスク着用や正しい着用法を拒否する人によるトラブルが相次いでいます。2021年1月16日に行われた大学入学共通テストの会場で、鼻をマスクで覆わなかった49歳の男性受験生が逮捕された事件は、世間に衝撃を与えました。

 試験監督官から再三注意を受けたにもかかわらず、「これが自分の正しいマスクの着用」などと拒み続けたため、男性は失格になったようです。その後トイレに長時間立てこもり、「不退去」の容疑で警察に逮捕される事態にまで発展します。

 また、2020年9月7日にピーチ・アビエーションに搭乗していた大学非常勤職員の男性が、飛行機内でマスク着用を拒んだあげく、女性客室乗務員に暴行を加えて怪我を負わせ、臨時着陸させたとして、1月19日に威力業務妨害と傷害、航空法違反の疑いで逮捕されました。報道によると、取り調べの際、捜査員がマスクの着用を求めても、「私はマスク拒否おじさんだから」と拒み続けたようです。

マスクを拒否する政治団体・国民主権党

 さらに、「コロナはただの風邪」と主張し、マスク着用拒否を呼びかけている団体すら存在します。「国民主権党」という政治団体です。彼らは、マスク非着用を呼びかける「クラスターデモ」「クラスターフェス」という集会を東京・渋谷の駅前等で開いていました。

 マスク非着用のまま集団で山手線に乗り込む等の迷惑行為も繰り返していましたが、2020年12月23日に、党首の平塚正幸氏が、日本医師会館の前で抗議デモをしている際に不法侵入し、建造物不退去により逮捕されています。

(※警視庁駒込署の前で平塚党首の逮捕に抗議する党員ら/2020年12月23日著者撮影)警視庁駒込署の前で平塚正幸「国民主権党」党首の逮捕に抗議する党員ら(警察車両の手前)=2020年12月23日、著者撮影

 そんな彼らにも、一定の支持者がついています。平塚氏はかつて2019年に「NHKから国民を守る党」(以下、N国)から参議院議員候補として立候補したように、その手法はN国と非常に似ており、YouTubeを駆使して資金と支持者を集めているようです。

レッドブルの広告「くたばれ、正論」の問題点

 なぜ、受験失格や逮捕というデメリットを受けてまで、彼らは頑なにマスクの着用や正しい着用法を拒否するのか、多くの人は理解に苦しむと思います。彼らにはいったいどのような行動原理があるのでしょうか? 単に「公権力から自由権を守りたいから」という理由で拒否している一部の欧米人などよりも、何か別の衝動に突き動かされているようにしか思えないのです。

 あれこれ考えた時に、彼らの“信念”を的確に描写していると思われる広告がありました。それはエナジードリンクのレッドブルです。レッドブルは1月11日の成人の日に合わせて、以下のようなメッセージを据えた広告を読売新聞朝刊に掲載し、インターネット上で大きく炎上しています。

くたばれ、正論。
この世の行き過ぎた正しさが、君の美しいカドを丸く削ろうとする。正しすぎることからは、何も生まれない。常識を積み重ねても、所詮それは常識以外の何物でもないから。自分の感受性を守れ。自分の衝動を守れ。自分の中のバカを守れ。本能が面白いと感じる方へ動くんだ。まっすぐ、愚直に、大きくいこう。

 この世の中には、「正しさ」が行き過ぎているどころか、それが足りないために、力ある者や分別がつかない者の身勝手な「衝動」「バカ」「本能」を抑える

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