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大倉孝二インタビュー、舞台『マシーン日記』に出演/上

シアターコクーンの芸術監督・松尾スズキの名作を大根仁の新演出で上演

大原薫 演劇ライター


 大倉孝二がBunkamuraシアターコクーンで上演される舞台『マシーン日記』に出演する。

 本作は同劇場芸術監督の松尾スズキの過去作品を、松尾自らが指名したクリエイターが“新演出”で甦らせるシリーズとして上演される。1996年初演以来幾度となく上演されてきた松尾の代表作のひとつで、演出に指名されたのは映像ディレクターの大根仁。ドラマ「演技者。」(2003年・CX)でも『マシーン日記』の演出を手掛けた大根がシアターコクーンに初登場する。

 小さな町工場・ツジヨシ兄弟電業を経営するアキトシ(大倉孝二)は、妻サチコ(森川葵)とともに自らの工場で働いていた。工場に隣接するプレハブ小屋に住む弟で電機修理工のミチオ(横山裕)は訳あってアキトシに監禁されており、小屋と右足を鎖でつながれていた。一方のサチコにはかつてミチオに強姦された過去があり、未だ不倫関係にあった。そんな中、工場に新しいパート従業員としてケイコ(秋山菜津子)がやって来る。ケイコは、携帯電話を直してもらったことをきっかけにミチオと結ばれ、「あんたのマシーンになる」と服従を誓う……。

 大倉孝二は劇団「ナイロン100℃」に所属する俳優。劇団の作品のほか、映画・ドラマ・舞台に多数出演して、強烈な印象を残している。今回が松尾スズキ作品初出演となる大倉に話を聞いた。

松尾スズキの芝居は、世界観も台詞も演じ方も唯一無二

拡大大倉孝二=森好弘 撮影〈ヘアメイク:山本絵里子/スタイリング:JOE(JOE TOKYO)、衣装:シャツ(エストネーション0120-503-971)〉

――男女の情念が渦巻く愛憎劇で、衝撃的な展開が続く『マシーン日記』。台本をお読みになってどう思われましたか?

 昨日いただいたばかりの台本を目に通したとき、読んでもまったくわからなかったです。「これはどうやればいいんだろう」って。ただ、過去の映像を何本か見せてもらったんですが、役者がやっているのを見るとそこは全然違和感がない。無理がないのがすごいなと思いましたね。

――なるほど。私も過去の戯曲を拝見しました。一読すると「これはどういう意味なんだろう?」と感じるところが多かったです。

 演じるにあたっては、あんまり全部「意味、意味」と考えていると多分わからなくなってしまう。意味ということに振り回されずにもう少し感覚的にやりたいなと思いますね。

――そういう場合は、演出家と一緒に作っていく?

 そうですね。共演者の方と演出家と。稽古場で演じながら生まれてくる感覚を重視しながら作っていければと思います。

――大倉さんは松尾スズキさんの作品には初出演なんですね。

 そうなんですよ。

――意外ですね。

 いやいや、本当に全くの初めてなんですけど。

拡大大倉孝二=森好弘 撮影

――今までご覧になった松尾さんの作品は、どんな印象でしたか。

 僕がいまさら言うことでもないですけど、松尾さんの芝居は世界観も台詞も、そして演じ方も本当に唯一無二じゃないですか。だから、その空間に自分がいるというのは想像してみたことがなかったですね。元々、「自分ならこんなふうにやるのに」とか思いながらお芝居見るタイプでもないんです。

――ふと思いましたが、役者としての松尾さんの融通無碍なところが、大倉さんに通じるものがあるかしらと思ったりします。

 本当ですか!? いやぁ、松尾さんのようにはできないですよ。そこは少し諦めてます(笑)。もう、俺なりにしかできないなとか。

――客席から拝見すると大倉さんはすごく自由にやっていらっしゃるようにお見受けしますが。

 ああ、そんな風に見てもらえているなら、少しは成功してるんですね。ふふふ。そんなに自由じゃないです、全然。不自由です。

――その不自由さはどんなところから来ているんですか。

 芝居が下手だからです。(笑)全然思うようにできないですね。毎日「なんでこんなに何回もやってもできないんだろう」と思いながらやってます。

◆公演情報◆
COCOON PRODUCTION 2021 『マシーン日記』
東京:2021年2月3日(水)~2月27日(土) Bunkamuraシアターコクーン
京都:2021年3月5日(金)~3月15日(月) ロームシアター京都 メインホール
公式ホームページ
※2/3〜7の公演については、前売り券及び当日券の取り扱いはありません。
※ご来場の際は、公式ホームページで最新情報をご確認の上ご来場いただきますようお願いします。
 
[スタッフ]
作:松尾スズキ
演出:大根仁
音楽:岩寺基晴、江島啓一、岡崎英美、草刈愛美(サカナクション)
[出演]
横山裕 大倉孝二 森川葵 秋山菜津子
 
〈大倉孝二プロフィル〉
 舞台芸術学院卒業後、劇団ナイロン100℃のオーディションを受け合格し、役者の道に入る。舞台をはじめ、ドラマや映画など多方面で活躍中。劇作家・演出家のブルー&スカイによるユニット「ジョンソン&ジャクソン」では作・演出を手がける。最近のおもな舞台出演作品は、『ドクター・ホフマンのサナトリウム 〜カフカ第4の長編〜』、『美しく青く』、『贋作・桜の森の満開の下』など。
公式ホームページ
公式twitter

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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