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柿澤勇人取材会レポート、舞台『スルース~探偵~』大阪公演開幕!

演劇の灯が消えないように少しずつでも前へ進んで行きたい

真名子陽子 ライター、エディター


 吉田鋼太郎さんと柿澤勇人さんによる、舞台『スルース~探偵~』の大阪公演が2月4日に開幕します(サンケイホールブリーゼ、7日まで。その後、新潟、仙台、名古屋公演と続く)。

 アントニー・シェーファーによる「探偵スルース」は、1970年にイギリスで発表され、1971年にトニー賞演劇作品賞を受賞したミステリー。日本でもさまざまなキャストにより上演が重ねられてきました。吉田鋼太郎さん演じる著名な推理小説家アンドリュー・ワイクと、柿澤勇人さん演じるワイクの妻の浮気相手マイロ・ティンドルが織りなすミステリーに、芝居巧者の二人がタッグを組んで挑みます。

 柿澤勇人さんの取材会が大阪で行われ、意気込みを語ってくれました。

男二人の人間臭さがどんどん炙り出される

拡大柿澤勇人=岸隆子 撮影

記者:今回の舞台、『スルース~探偵~』はどういう作品か教えてください。

柿澤:鋼太郎さん演じるワイクと僕が演じるティンドルという男二人が、ひとりの女性をめぐって繰り広げる話なんですが、次第にゲームみたいになっていき、男二人の人間臭さがどんどん炙り出されていきます。それが面白かったり、怖かったり、お客さまがスリルを味わうような…「探偵」という意味はそういうことなんじゃないかな。最後はどうなるんだろうというサスペンス劇です。

記者:人間臭さがあるとのことですが、どういうところに感じますか?

柿澤:ひとりの女性に振り回される男二人、その構図がそもそも人間臭いと思います。なぜひとりの女性のために、こんなにしっちゃかめっちゃかやんなきゃいけないの?って。年齢も違うし生きてきた環境も国も違う二人だけど、似ているところもあって何かシンパシーを感じている、けれど仲良くはならない。二人の根底にある人間くさいところがフィットする瞬間があるんですよね。そういうところがおもしろくて笑えたりもするし、ホッとしたりするんじゃないかなと思っています。

それぞれが自分の中に相反するものを持っている

記者:柿澤さん演じるティンドルについて教えて下さい。

柿澤:若くて非常に頭が冴えていて、どうやって鋼太郎さん演じるワイクよりマウントを取るか、イニシアティブを取るか、常に頭が回転している。ただ、若さが邪魔をして調子に乗ってしまう、乗せられてしまうところもあります。イタリア人なんだけど人種的なコンプレックスもあって、反骨心まではいかないんだけれども常に何か成し遂げたいという思いを持っている青年です。非常に繊細な人なんだけど、センシティブをセンシティブなまま演じてしまうと2時間が耐えられなくなってしまうので、イタリア人の気質を考えながら、センシティブだけどセンシティブに見られないようにしなければいけないというところが、非常に難しいなと感じています。

記者:鋼太郎さん演じるワイクは?

柿澤:僕が演じるティンドルは、愛がある生活があれば絶対に良い人生になると信じて疑わない若い青年で、鋼太郎さん演じるワイクは、愛なんてものはいらない金がすべてだというおじさんです。でもティンドルは、金はなく愛を信じているけれども現実を常に見ていて、ワイクは金を持っていて愛を信じていないけれど、自分自身は推理小説家で空想が大好き。そんな風にそれぞれが自分の中に相反するものを持っているので、そのあたりがうまく混ざって複雑になればなるほど、男二人がいろんな視点で見えてくると思います。

鋼太郎さんは頼もしい存在でもあり、怖い存在

拡大柿澤勇人=岸隆子 撮影

記者:吉田鋼太郎さんとの二人芝居ですが、それについてはいかがでしょうか?

柿澤:鋼太郎さんは数十年、芝居をされてきた中で二人芝居は初めてで、僕は『スリル・ミー』というミュージカル作品で二人芝居をしたことはあるのですが、ミュージカルでしたから歌がありました。でも今回は歌はなく、会話劇で約2時間を駆け抜けます。そういう意味ではお互い二人芝居が初めてですし、僕はビビってます(笑)。

記者:吉田鋼太郎さんとはこれまでに共演していますがどんな印象をお持ちですか?

柿澤:鋼太郎さんは芝居に関して非常に膨大な知識量と情報量を持っていて、特にシェイクスピアに関しては、役者の中で日本で一番知っている方と言っても過言ではないと僕は思っています。芝居に対して非常に厳しい方ですし、本読みの時などよく理解しないまま雰囲気でセリフを言うとすぐ見抜かれます、今適当に言っただろう!? と。役者としてももちろん素晴らしいですし、芝居を見抜く力が演出家としてとても長けていらっしゃると思います。僕にとっては頼もしい存在でもあり、怖い存在でもあります。一方で、稽古場を離れると、とてもチャーミングでお茶目なところもあって、そういうところがいろんな俳優に慕われる理由なのかなと思います。

鋼太郎さんに負けないところ・・・まだわからない

拡大柿澤勇人=岸隆子 撮影

記者:鋼太郎さんの柿澤さんへのコメントに「俺の若い頃にそっくり」とありますが、どの辺りを指していると思いますか?

柿澤:二人とも劇団四季出身なんですけど、タイツを履くのが嫌だったというところかな!?(笑)。僕は恵まれてたくさんの作品をやらせてもらっていますが全然満足していないですし、自分が売れているとも思っていません。もっと売れてたくさんの方に舞台を観に来てほしいので、もっともっとがんばろうと思っています。鋼太郎さんもそういう思いを持っていると思うんです。劇団四季を辞めた後、シェイクスピアの劇団に入りご自身でも劇団を作られて。蜷川幸雄さんに才能を見出されて主役をしていたけれど、世間はなぜもっと認めてくれないんだって常に思っていたらしいんです。そういうところが似ているんじゃないかなと僕は思っています。あとは、言えないことが多いかな……(笑)。あっ、僕は結婚は1回で良いと思ってますけどね(笑)。

記者:さらに柿澤さんのことを「狂犬」ともおっしゃっています。

柿澤:芝居に関して負けたくない、もっとうまくなりたい、成長しないとこの世界で生き残っていけないと常に感じています。以前、鋼太郎さんが蜷川さんから引き継いで初めて演出したシェイクスピアシリーズの『アテネのタイモン』に出させていただいた時に、僕が政府や貴族に対して怒り狂うシーンがあって、シェイクスピアですから日常会話のセリフではないんですね。「愛してる」と伝えるのに台本3ページぐらいの言葉で表します。その怒り狂うシーンも台本3ページくらいある長セリフで、しかも独白だったんです。鋼太郎さんは僕がやり辛そうに見えたようで「カッキー(柿澤)、客席で吠えて」って。「動きは任せる、通路を使ったりして縦横無尽に駆け回って叫んで」っておっしゃって。決してできないですとは言えないですし、期待に応えたかったのでがんばってクリアしました。その時に「コイツ、ついてきたな」って思ってもらえたと思うんです。「狂犬」の本当の意味はわからないですけど、そういうところかなと思います。

記者:吉田鋼太郎さんに負けないところはありますか?

柿澤:なんだろう……難しいですね。鋼太郎さんより僕の方が少し背が高いんですけど、対峙した時にすっごく大きく見えるんですよね。やっぱりすごい役者だなあって感じます。鋼太郎さんは、芝居は勝ち負けだって言う方で、僕もそう思うところがあるので勝ち負けで考えると……う~~ん何が勝てるんだろう、ずっと模索中ですね。若さはあるけれどもそれは単純に年齢だけの問題であって。拮抗して対立していかないと芝居も面白くないので、何で勝てるかまだわからないですね。

拡大柿澤勇人=岸隆子 撮影

記者:たくさん舞台に出られているのに、自分はまだ売れていないとおっしゃっていましたが、どういう時に実感されるんですか?

柿澤:鋼太郎さんと藤原竜也さんとドラマで共演した時に、2週間ほど地方で撮影していたんです。よく3人で食事へ行ってたんですが、普通の居酒屋でしたから周りにお客さんがいらっしゃって、鋼太郎さんや竜也さんは目立つので写真を撮ってくださいって言われるんですけど、そういう時、僕はいつもカメラマンなんです。まあ、そんなことがあると2軒目は荒れるんですけどね(笑)。「売れてないってこういうことだよね」って言ったら、鋼太郎さんが横でニコニコしながら「そういうことだよ」って。そもそも「売れろ」っていうのは蜷川さんの口ぐせなんです。お会いすると必ず「お前、売れてんのか?」って聞かれていました。「もっとやれ、もっとがんばれ、もっと売れろ」と。それが僕のエネルギーになっています。

記者:では最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

柿澤:こういう状況の中、演劇は敬遠されがちですけど、ストップしてしまったら灯が消えてしまいますので、しっかりと対策をしつつ、少しずつでも前へ進んで行かなきゃいけないと思っています。お客様にも演劇を支えて欲しいですし、芝居を支えて欲しいなと思っています。ひとつのセリフ、ひとつの動きを見逃して欲しくない芝居です。この芝居やばかったなと思わせるようなものにしたいと思っています。劇場でお待ちしております。

◆公演情報◆
舞台『スルース~探偵~』
大阪:2021年2月4日(木)~2月7日(日) サンケイホールブリーゼ
新潟:2021年2月10日(水)~2月11日(木)  りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
仙台:2021年2月13日(土)~2月14日(日)  電力ホール
名古屋:2021年2月19日(金)~21日(日) ウインクあいち大ホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:アントニー・シェーファー
翻訳:常田景子
演出:吉田鋼太郎
[出演]
柿澤勇人、吉田鋼太郎 ほか

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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