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幇助死の法制化で、患者と医師が最善の死について深く話すようになった

カナダ・アルバータ大学腫瘍学・緩和ケア医療部門臨床教授・樽見葉子さんに聞く(下)

鈴木理香子 フリーライター

いつ、どこで、どのように死ぬのか

――では話をMAIDに戻します。樽見さんは緩和ケア医という、MAIDにもっとも近いけれど、決して交わることのない立場にいます。この制度についてどう考えますか。

樽見 それについては、個人の意見と一般的な意見を紹介していいですか。

――もちろんです。

樽見 まずは一般的な意見、つまりカナダの医療者はどう考えているか、です。必要とするすべての患者さんに緩和ケアが提供できていない現在、MAIDに時間と医療資源を費やすより、緩和ケアの提供を強化すべきだと批判的な立場をとる医師は多いです。また、緩和ケア病棟の医師や看護師はMAIDの日を直前まで知らされず、その日が来たら急に準備をしなければならないので、他の患者さんへのケアに影響が出てしまいます。このため、MAID行為以外の現場の医療に配慮する必要があると考える医療者もいます。

――なるほど。樽見さん自身の考えは?

樽見 そもそも自殺幇助は医師がすべき行為なのか、未だ決着がついていません。確かに、患者さんの健康や病気に詳しく、倫理やモラルに関するトレーニングをしっかり受けているのは医師ですし、実際、回復の見込みのない深刻な病気かどうかが判断できるのも医師です。ですから、医師や一部の専門的な医療者以外の人が幇助死に関わることになっては困るのですが、一方で、私たちは患者さんを積極的に死に至らしめる教育やトレーニングは受けていません。患者さんを直接死に至らしめる行為が犯罪ではないとされていても、医療者がその行為をすることには強く抵抗を感じます。

――なぜ医師なのか。確かにそうですよね。

樽見 だからといって、MAIDに賛成か反対かという議論は別だと思います。緩和ケア医になって20年以上経ちますが、これまでにいろんな患者さんに出会い、いろんな死に方に立ち会ってきました。そのなかで、

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筆者

鈴木理香子

鈴木理香子(すずき・りかこ) フリーライター

TVの番組製作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆