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春風亭昇太が衝撃を受けた、つかこうへいドラマ

『つかこうへいのかけおち'83』①

長谷川康夫 演出家・脚本家

昇太さんが語る『かけおち'83』

 2016年10月9日、日曜の午後。普段テレビはほぼニュースとスポーツ中継しか観ない僕が、『NHKアーカイブス あのひとが選ぶあの番組』というタイトルにチャンネルを合わせたのは、事前にNHKから連絡を受けていたからだと思う。その放送の中で、落語家の春風亭昇太氏が思い出に残る番組として、1983年のドラマ作品『かけおち'83』を取り上げるというのだ。

拡大春風亭昇太
 登場した昇太氏は、この33年も前のドラマがよほど強く印象にあるらしく、

 「衝撃的だったですね。こういうこともできるんだ、というか、やっていいんだテレビって」

 と、声を弾ませ、そこから83年の夏、5夜連続で放送された『かけおち'83』の第1話が始まった。

 当時、NHKでは『朝の連続テレビ小説』と並ぶ形で、夜10時前後に『銀河テレビ小説』という1話20分、月~金の連続ドラマ枠が長く続いていて、『かけおち'83』もそのひとつだった。ただし本来はどれも20話から30話完結であるのに、これは〝夏期特集〟なる特別枠として、1週間だけの放送だった。

 その第1話がフルで流れ、カメラはスタジオに戻る。昇太氏の顔はさらに輝いていた。

 「もうたまらないですね。懐かしいですね。シーンが変わるたびに『あっ、これこれ!』って思いながら観てたんですけど」

 その言葉に、司会の森田美由紀アナウンサーが「何の説明もなく、とんでもない展開に巻き込まれていく感じですよね」と返し、「このあとどんどんすごくなるんですよ」との昇太氏の振りで、さらに残り4話がダイジェストで紹介された。

 僕は第1話を含め、もう観ることなどないと思っていたその映像に、昇太氏と同じように胸躍らせていた。負けじと「あっ、これこれ!」だった。

 実は、当時買って間もない家庭用ビデオでこのドラマ全編を録画したテープを、ずっと持ってはいた。しかしそれが「ベータ」であるため、何年か前に思い切って処分してしまったのだ。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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