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『ローズのジレンマ』に出演、村井良大インタビュー/上

今まで演じたことのない危険な香りのする男が変化していく

橘涼香 演劇ライター


 「喜劇王」と称される米国を代表する喜劇作家ニール・サイモンの晩年の傑作『ローズのジレンマ』が大地真央、神田沙也加、村井良大、別所哲也という豪華キャスト陣と、翻訳・演出に快進撃を続け、今大きな注目を集めている演出家・小山ゆうなを迎えて2月6日に開幕する。(~25日まで、シアタークリエ。2月27日~3月1日大阪・新歌舞伎座、3月3日愛知・刈谷市総合文化センター アイリスでも上演)。

 『ローズのジレンマ』は2003年にオフブロードウェイで2ヶ月あまりの限定公演が行われ、翌2004年に日本初上演を果たした作品。最愛のパートナーだった人気作家ウォルシュの亡きあとパッタリと筆が進まず、経済的危機に瀕している大物女優作家ローズが、ウォルシュの亡霊に促されて、売れない作家クランシーと共に、ウォルシュの未完の遺作を仕上げる中で、残された人生と向かい合っていく様が、ニール・サイモンらしいアメリカの空気満載の、ユーモアとペーソスの中で描かれていく。

拡大村井良大=岩田えり 撮影

 そんな作品でヒロイン・ローズとコンビを組んで作品を仕上げることになるクランシー役を演じるのが村井良大。『RENT』を始めとした人気舞台作品に多数出演、近年はTVドラマ等映像の世界でも注目されている村井に、稽古に入った感想や共演者の魅力、また売れない作家である自分がなぜ共同執筆者に選ばれたのかがわからないクランシーに、共感するエピソード等を語ってもらった。

どんな形に仕上げても正解だからこそセンスが問われる

──立ち稽古がはじまっているそうですが、実際に演じてみていかがですか?

 まず本読みから稽古が始まったのですが、今まで見たことがない量のパーテーションで全員が仕切られていて、お互いの顔が全く見えない状態だったんです。本読みですから見えなくても成り立つのですが、皆さんがどんな表情をしていらっしゃるのかがわからないまま読むという、とても不思議な体験をしました(笑)。

──それは想像しただけでも大変そうです。

 もちろん今の時期ですから、そういう対策はやらなければならないし、やった方がいいのですが、その状態で毎日最初から最後まで、周りが今どういう状況でどういう心理なのかを考えながら、感じながら読んでいく中で、ニール・サイモンの言葉の巧みさと同時に難しさを感じた時間でした。でもそのプロセスが如何に大事だったかが、立ち稽古に入ってから改めてわかりました。本読みを丁寧に繰り返してから立ってみると、中身をしっかり理解した状態で動けるので、貴重な時間だったんだなと思いました。

拡大村井良大=岩田えり 撮影

──それが立ち稽古に入ってからよりハッキリしてきたんですね。

 百聞は一見に如かずと言うか。この本を自分一人で読んでいた時には、人物像がパっと浮かんでこない部分があったんです。と言うのも、どういう方向にでも作れるなと感じられる台本になっていて。例えば不揃いの形のパズルを完成させるとしたら、どんな形になったとしてもそれが正解ですよね。ただそのそれぞれの完成形からどんなセンスが浮かび上がるのかは、我々の努力次第というところがあって。そこがすごく難しい台本だなと思いました。戯曲として読んでいる分にはもちろんすごく面白いんですよ。でもそれが立体になった時に、主にワンシチュエーションで出来ているので、セットがすごく動く訳でもないから、その時その場面で僕はどこにいるのが一番効果的なのか?どこにいれば互いの関係性がよりよく見えるのかを一つひとつ考え、感じて動かないといけないんです。そこがとても手強いです。

「人を見た目で判断してはいけない」に行きつく

──その中で演じるクランシー役についてはいかがですか?

 今まで僕があまりやったことのない役です。結構危険な香りのする男で、女の子に手を出すスピードが速かったり、色々失礼な態度を取ったりするヘンな奴でもあって(笑)。どういう環境で育つとこうなっちゃうんだろうな、とちょっと不思議でもありましたし、見た目も最初は全然イケてないんですが、物語が進むにつれて少しずつクランシーの良い面が垣間見えてきて、最終的には「人を見た目で判断してはいけない」(笑)というところに行きつくと言うか。

拡大村井良大=岩田えり 撮影

──村井さんのように素敵な方が演じられると、出て来た途端から素敵な人に見えてしまうのでは。

 いえいえいえ(笑)。登場人物それぞれが物語の中で変化していくのですが、ある意味クランシーが一番早く変化するんじゃないかな?と思うので、そこはしっかり変わっていきたいですね。彼がスピード感を持って動き回り変化していくことによって、周りも動かしていく人物だと感じています。

◆公演情報◆
『ローズのジレンマ』
東京:2021年2月6日(土)~2月25日(木) シアタークリエ
大阪:2021年2月27日(土)~3月1日(月) 新歌舞伎座
愛知:2021年3月3日(水) 刈谷市総合文化センター アイリス
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ニール・サイモン
翻訳・演出:小山ゆうな
[出演]
大地真央、神田沙也加、村井良大、別所哲也
 
〈村井良大プロフィル〉
 東京都出身。2007年のドラマ『風魔の小次郎』でドラマ初主演を飾り、以降『仮面ライダー ディケイド』『戦国鍋TV』などの映像作品や舞台で人気を集める。主な出演作は、『INSPIRE 陰陽師』、『生きる』、『デスノート THE MUSICAL』、『ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~』『あなたの初恋探します』『RENT』など。4月から舞台『魔界転生』への出演が決まっている。
公式ホームページ
公式twitter

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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