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【公演評】花組『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』

おぼっちゃまプレイボーイ柚香光の優しさとカッコよさが煌めくハートフルコメディ

さかせがわ猫丸 フリーライター


 花組ブロードウェイ・ミュージカル『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』が、2月2日、梅田芸術劇場で初日を迎えました。2012年にブロードウェイで上演され、トニー賞10部門にもノミネートされた名作で、これが日本初上演となります。

 花組のトップスター柚香光さんが演じるのは、世間知らずなプレイボーイ。育ちの良さがにじむ優しさとカッコよさが憎めなくて、柚香さんの魅力が重なります。相手役の華優希さんもボーイッシュな酒の密売人を弾けるように演じ、演技力の高さを見せました。おぼっちゃまと密売人……まったく違う世界に生きる2人の恋は、笑いとロマンチックがいっぱい。

 ガーシュウィン兄弟の名曲の数々がブロードウェイ・ミュージカルらしさを高め、ダンスが得意な柚香さんの軽快なタップシーンもたっぷり登場します。

 コロナ禍で沈みがちな気分を吹き飛ばすようなハートフルコメディに、劇場は笑顔の花で満開になりました。(以下、ネタバレあります)

憎めないプレイボーイの柚香

――1920年代、禁酒法時代のニューヨーク。マンハッタンのもぐり酒場では、ジミー・ウィンター(柚香)が4度目の結婚を前に、独身最後の夜を楽しんでいた。やがてパーティを抜け出し酒場の外へ出たジミーは、少年のような姿をした酒の密売人ビリー・ベンディックス(華)と出会う。酒の隠し場所を探していたビリーは、酔っぱらったジミーから、ロングアイランドに絶対使うことのない別荘があると聞き、さっそく仲間のクッキー・マクジー(瀬戸かずや)とデューク・マホーニー(飛龍つかさ)に伝えるのだった。

 ジミーは苦労知らずのおぼっちゃま。すでに3度も離婚していますが、まったく懲りる様子もなく、今度は世界一のモダンダンサー、アイリーン・エヴァグリーン(永久輝せあ)との結婚を控えていました。演じる柚香さんは、そんなプレイボーイ設定がこの上なく似合うカッコよさ。高価そうなスーツや普段着、パジャマまでバッチリ着こなします。酒場のショーガールたちにもモテモテで、いけすかない男かと思いきや、そうでもないのがまた憎い。ジミーは確かに軽薄ですが、冷酷ではありませんし、素直で可愛らしい面がたくさんあって、妙に魅力的なんです。そこへ、柚香さんの優しい演技が重なれば、くすぐられない女性はいないでしょう。

 柚香さん得意のダンスシーンでは、軽快にタップを鳴らし、花組生たちをリード。課題の歌も、音域が合っているため、気持ちよく歌えているようでした。

 昨年は大劇場お披露目公演が、コロナ禍で途切れながら何か月にも渡って上演するなど、厳しい船出となりました。しかし、舞台の真ん中に立つ柚香さんの堂々たる姿に、新しい花組がますます進化していく予感に胸が高鳴ります。

元気いっぱい華の魅力が炸裂

 ビリーを演じる華さんは、次の大劇場公演での退団が決まっています。2019年6月、花組トップ娘役に就任。前トップ明日海りおさんから引き続き、柚香さんの相手役をつとめていますが、早々の退団は残念です。2018年『ポーの一族』のメリーベル役では、フランス人形のような可愛らしさで話題を呼び、『はいからさんが通る』では一転、おきゃんな女学生に変身するなど、その演技力の高さには定評がありました。

 今回のビリーは、酒の密売でたくましく生きる男勝りな女の子。住む世界が違いすぎるジミーに何を言われてもビクともしなかったのに、ふとしたきっかけで乙女心がわき出し、葛藤し始めるいじらしさがたまりません。ボーイッシュな女の子が見せる純情さは、華さんの腕の見せどころ。柚香さんの優しさに意地を張り続ける姿には、思わず感情移入してしまいそう。

◆公演情報◆
『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』
Music and Lyrics by George and Ira Gershwin
Book by Joe DiPietro
Inspired by Material by Guy Bolton and P. G. Wodehouse
2021年2月2日(火)~2月9日(火) 梅田芸術劇場メインホール
公式ホームページ
[スタッフ]
潤色・演出:原田 諒

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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