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「第二の森喜朗」阻止のため、わりと会議に出ていた者からの提言

矢部万紀子 コラムニスト

 森喜朗という東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長にして元首相である83歳の男性が、JOC(日本オリンピック委員会)臨時評議員会という場で、「女性が多い会議は時間がかかる」などと女性蔑視の発言をした。2021年2月3日のことだ。

 ダメです、ありえないです、さようなら。で、終えたいくらいの発言だが、私は1983年以来、会社という組織に長く属し、そこそこ「会議」というものに出ていた。その責任とは言わないけれど、二つの方向から考えようと思う。一つは、森喜朗という人の問題。もう一つは、彼が明らかにした「男社会」という問題。

森喜朗発言問題は、彼個人だけの問題ではない森喜朗氏個人だけの問題なのか

 一つ目の方は、短く済ませる。1度だけ、彼を間近で見たことがある。ある女性作家のパーティーで、それは2003年だったと思い出したのは、「問題になった森喜朗会長の過去の発言」の一覧表を朝日新聞(21年2月5日朝刊)で見たから。03年に「子どもを一人もつくらない女性を税金で面倒をみるのはおかしい」と発言したとあった。

 彼は壇上で挨拶をしたが、その内容は覚えていない。が、ある女性作家の挨拶はよく覚えている。その日の主役にまつわるエピソードを披露し、ほんの短く「自分は子どもを産んでいない」話をし、こう締め括った。「悪かったわね」。

 森さんの方を見たか、見なかったか。やるなー、カッコいいなー。そう思っていたのだが、森さん、彼女に「君、失礼じゃないか」と言ったそうだ。彼女が、主役の女性作家にそう報告するのを聞いたのだ。なんて小さい男。その場にいたのは全員女性で、そういう空気だったと記憶している。

「挨拶禁止」にするしかないけれど

 自分の発言が問題だったと誰かに指摘されると、反省するのでなく、失礼だと思う。彼はそういう人なのだろう。女性蔑視発言を受けての記者会見でも、「深く反省している。発言は撤回したい」と言っていたが、あれこれ質問されるとムッとして、「面白おかしくしたいから、聞いてるんだろ」とキレていた。反省なんて建前と、まるわかり。

 辞任する考えはないと明言していた。日本人のほぼ全員が思っているはずだが、このまま続ければ、彼はきっとまた何か言う。「有名人(の聖火ランナー)は田んぼを走っていればいいんじゃないか」と言ったのは2日で、次の日が「女性が出る会議は長い」。すごい頻度だから「森喜朗は挨拶禁止」にするしかないけれど、挨拶を禁止される人を会長にする組織ってどうなのだろう。さすがの彼も、さすがの組織委員会も、さすがのJOCもIOC(国際オリンピック委員会)も、このままではすまないのじゃないかなーと思いつつ、ここからは彼が明らかにした「男社会」の話をする。

森喜朗「深く反省している」とは言ったけれど……

 女性理事を選ぶのは「文科省がうるさく言う」からで、「女性理事がたくさん入っている理事会」の会議は時間がかかり、それは「女性っていうのは競争意識が強いから」で、「私ども」組織委員会の女性は「みんなわきまえて」おられる。そう語ったのは、JOCというのは身内の場で、出席者はみんなそう思っている、と疑ってもいないからだろう。

 「文科省に言われてしょうがなく入れてやってるのに、長々しゃべるから男は困ってるんだ、女はまったくよー、わきまえてくれよー」。彼の言葉を心の中で翻訳しつつ、

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