患者には「統計」ではなく「100か0か」しかない
2021年02月10日
日本に留学経験があり、その後、中国の南京にある大学で教授になった中国人の友人から電話がかかってきた。
「新型コロナウイルスの日本での感染拡大を心配しています。あなたはもうワクチンを接種したのでしょうね?」
「まだですよ」と答えると、彼女は「えー!」と悲鳴のような声をあげた。
「どうして!? あなたは病院に勤めてるんでしょう? こっちは医療従事者はほとんど全員、受けてるのに」
私は、「日本ではまだ誰に対しても接種は始まっていない」と説明したのだが、彼女は「なぜ?」「信じられない」「早く受けて」と繰り返すばかりであった。
たしかに日本でのワクチン接種は遅れている。2月5日、WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルスワクチンの世界の接種回数が1億400万回を超え、感染者の人数を上回ったことを明らかにした。ただ、接種はGDPの高いいわゆる先進国に偏っている、とWHOは懸念している。そして、日本は先進国であるはずなのに、少なくとも公式発表では接種回数はゼロのままなのである。
では、なぜ日本ではこれほどワクチンの接種開始が遅れているのか。
その最大の原因は、国民の側のワクチンへの忌避感情だとする説もある。
大手通信社ブルームバーグは昨年(2020年)末、「ワクチンに警戒感根強い日本、普及後れの可能性―過去の薬害が影か」と銘打たれた記事を配信、国民に根付いたワクチン忌避の感情が導入を遅らせている可能性があると指摘した。この記事では15カ国を対象に実施した意識調査が紹介されているが、新型コロナワクチンの接種を希望する人はインドで87%、イギリスで79%だったのに対して、日本では69%にとどまっていたという。
さらにこのワクチンを忌避する国民感情の原因として、
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