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日本の「ラ・マルセイエーズ」になりそこねた唄/上

【34】「民族独立行動隊の歌」

前田和男 翻訳家・ノンフィクション作家

英雄視を嫌って作者であることを秘匿

 かくしてこの世に生を享けた「民独」だが、それがやがて左翼運動圏の愛唱歌となり、さらには日本の「ラ・マルセイエーズ」に擬せられるまでに育つことを、「産みの親」である山岸一章自身は、まったく予期してはいなかったようだ。

 実は山岸は筆者の元妻方の親戚である。山岸は小学校卒の叩き上げの労働者で、国鉄大井工場の用品庫係として労働運動に関わるなか、(筆者が誕生した)昭和22(1947)年に共産党に入党、前述の「煙突男」となったことが仇となりレッドパージを食らい、職場を追われた。おそらく天性の文才があったからでもあろう、後に「アカハタ(現「赤旗」)の記者をへて共産党の影響下にある「民主文学」を代表する作家となり、戦前の呉海軍の反軍活動を描いた『聳ゆるマスト』で多喜二・百合子賞を受賞。「生涯共産党員」をまっとうして平成7(1995)年に亡くなっている。

 かたや筆者は、学生時代には山岸とは敵対関係にある極左冒険主義者にして左翼小児病患者の「トロツキスト」であったが、お互いそれを知りながら、著作を交換する「大人の関係」に

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筆者

前田和男

前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家

1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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