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日本の「ラ・マルセイエーズ」になりそこねた唄/下

【35】「民族独立行動隊の歌」

前田和男 翻訳家・ノンフィクション作家

歌声喫茶の「懐メロ」にされた「民独」

 かくして「民独」は命脈を絶たれたも同然のはずであった。

 共産党自身も歴史的な路線転換で「瀕死の傷」を負った。覚悟の上とはいえ、非合法活動に入るまでは衆参あわせて最大39人もいた国会議員は国民の支持を失ってゼロになった。多くの党員が去っていくなかで、「党の再建」が最優先課題にすえられ、そのため5年後に控える戦後最大の政治テーマである「日米安保条約改定問題」へ取り組む余裕はなかった。

 その運動を担ったのは、皮肉なことに、「六全協ショック」で党を去っていった学生たちが結成した「共産主義者同盟」(ブント)を中心にした新左翼グループと彼らが主導した全学連であり、共産党が「日和見主義」と見下してきた社会党であり、彼らの影響下にある「ニワトリからアヒル」となった総評傘下の労働者たちだった。

 1年以上にわたる安保条約反対の抗議行動には、全国6000カ所の集会やデモにのべ560万人もが参加、国会での承認をめぐる最終局面の1960年6月19日には33万人ものデモの輪が国会を取り囲んだが、街頭でも集会でも共産党の影響力は無きに等しかった。彼らがまがりなりにも存在感を示すのは、安保闘争が敗北に終わった翌61年の第8回党大会以降のことである。

 そんな中で、「民独」はどうなったのか。

 かつてこの唄を売り出したプロデューサーの共産党にとっては、せっかく党に残った人々に忌まわしい「暴力闘争」の記憶を蘇らせる悪夢でしか

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筆者

前田和男

前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家

1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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