2021年02月22日
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長の後任が、橋本聖子さんに決まった。橋本さんは男女共同参画、東京五輪・パラリンピック、女性活躍担当大臣を辞任、後任には丸川珠代さんが起用された。
という2月18日の2件の人事を見ていて、まるで自分の勤めている会社で発表された人事を見たような気持ちになってしまった。結果、心が晴れない。正直、森さんの女性蔑視発言を聞いたときより、ずっと暗い。
2月3日、森さんの「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」から始まった今回の事態、4日の逆ギレ謝罪会見から日を追うごとにトホホ感が増していった。あきれた。脱力した。それに比べ、この人事、重い。少し振り返ってみる。
<2月5日> JOC(日本オリンピック委員会)の山下泰裕会長が会見、臨時評議員会での森発言について、「40分近く話された中で、(女性蔑視と)指摘する機を逸した」と述べた。1人で40分。時間がかかるのは、森さん、あなたじゃないですか。
<2月11日> 森さんが周囲に辞意を伝え、川淵三郎さんに後任を要請。川淵さんはやる気ありで、「森相談役」(本人了承済み)を記者に語る。83歳が84歳につないで、83歳は残留。双六でいったら「振り出しに戻る」。
<2月12日> 組織委員会の臨時懇談会で森さん辞意表明。川淵さん後任辞退。会長候補者検討委員会設置、座長は御手洗冨士夫・組織委員会名誉会長。御手洗さん、85歳。登場人物の年齢が1歳ずつ上がる。
<2月16日> 二階俊博自民党幹事長が、総務会など幹部会議に女性議員をオブザーバーとして出席させる考えを示す。党会議後の会見で「どういう議論がなされておるか。それをご覧に入れようということだ」と説明。女子は見学。戦前感満載。
ちなみに二階さんは2月17日が82歳の誕生日。二階(82)→森(83)→川淵(84)→御手洗(85)。バトンつながる、パチパチパチ。
などと、からかえたのはここまで。橋本会長、丸川大臣の人事が18日に発令されてからは、そういう気持ちにならなくなった。「やっぱりねー」と思ったのだ。やっぱり選ばれるのは、こういう女性だよねー、と。冒頭で、まるで自分の勤めている会社の人事を見たような気持ちと書いたのはそのこと。自分のことは、からかえない。
で、「こういう女性」とは、だ。説明はわりと簡単、森発言のおかげだ。そう、「わきまえている」女性だ。それはつまり、男性たちの決めたことに真っ向から反対したり、男性の価値観を否定したりしない、安心安全な女性。2人とも、そういう女性だと思う。
そういう女性と認定される。それが働く女性の生きる道。なぜなら、仕事が回ってくる。出世する、と言い換えてもいい。そして、ひとたびそう認定されれば、「女性といえばあの人」となる。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事が2月16日、企業で女性役員の登用が進んでいないことについて、「女性側にも全く原因がない訳ではない」と述べた。「自ら(チャンスを)取りに行かれる方はまだまだ多くないように感じている」のだそうだ。そういう指摘、よく聞く。でも「わきまえている女性」と認定されないと、「取りに行く以前の人」になる。それが、私の実感だ。
「わきまえている女性」になるには、作法がある。本音を語る、はアウト。「王様は裸だ」などは論外だが、「王様、薄着じゃないですか?」もかなりの確率でアウト。「王様、その服、すっごくお似合いです」とごく自然に言うのが正解。30年以上の会社員生活で実感したことだ。
だが、森発言である意味、希望がともった。
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