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コロナ禍の映画界「今はどうにかなっているが、これが続くと危ない」

興行収入は前年の55%。劇場に助成金はあるが、配給会社には寄付もなし

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

 コロナ禍は多くのエンタメ産業に打撃を与えたが、この1年間、映画界も翻弄され続けた。2020年4月に緊急事態宣言で映画館が閉鎖され、6月に再開したが、多くの劇場は席を半分にしての興行だった。9月後半ごろからようやく全席を使っての興行が始まったが、その場合にはコンセッション(売店)で食べ物の販売ができなかった。

 さらに今年1月の緊急事態宣言からは、夜8時までという新しい制約ができた。2020年の興行収入は約1433億円で、史上最高だった前年の55%と、2000年以降で最低の数字となった。

シアターセブンでは午後8時までに全ての上映を終えている=2021年1月26日、大阪市淀川区緊急事態宣言下の都府県では、ほとんどの劇場の上映は午後8時まで=2021年1月26日、大阪市の「シアターセブン」

 アメリカでは35%の映画館しか開けていないこともあり、ディズニーとワーナー・ブラザースが劇場公開と同時にそれぞれ自社のDisney+やHBO Maxでの配信を始めた。在米のジャーナリスト、猿渡由紀氏は「アメリカの映画館「倒産続出」は避けられない訳」(東洋経済ONLINE)でシネコンチェーンがつぶれそうな現状を解説している。

 それでは日本はどうなのだろうか。映画業界の方に話を聞くとおおむね「見たい映画は見に来る」「今はどうにかなっているが、これが続くと危ない」という返事だった。

「配信で魅力を知ったお客さんが劇場に来てくれる」

 コロナ禍対策では、製作も配給も興行もお金と手間をかけて苦労してきた。フリーの映画プロデューサーのA氏によれば、制作現場の対応は会社によってさまざまという。東宝のように自社が幹事の作品制作を今春まで中止しているところもある。Netflix(ネットフリックス)やアマゾンのように週に2、3回PCR検査を義務付けている外資系もあれば、リハーサルまではキャストにもマスクをつけさせる会社や、スタッフにはマスクに加えてフェイスシールドを義務付ける会社もあるという。

 配給しても一般向けの試写はできないし、初日の舞台挨拶で衝立を置いたり、舞台に近い席を空けたり、小さな拍手にしてもらったり。劇場では入場の際に検温したり毎回座席を消毒したり、イオンシネマのように今も座席を減らし一部の劇場にパーテーションを作ったところもある。

2020年5月、感染防止策として、隣り合う席を座れないようにしている大阪市の「新世界国際劇場」。こうした措置をとっている映画館はいまでも少なくない2020年5月、感染防止策として隣り合う席を座れないようにした大阪市の「新世界国際劇場」。こうした措置をとっている映画館は今でも少なくない

 東映系のシネコン、ティ・ジョイ興行部劇場運営室運営管理チームの田中裕行さんは「2019年の興行がよかったので、昨年は何とか経営できたが、今年以降は作品次第でわからない」と言う。劇場にも本社にも問い合わせは増えたが「映画館が安心、安全ということがまだみなさんに伝わっていない」とも。確かに映画館でクラスターは一度も発生していない。

 コロナ禍で在宅が増えてネットフリックスなどの配信が定着したことに対して、同じティ・ジョイ興行部番組編成室番組編成チームの親川拓海さんは「5年くらいかけて起きると思っていたことが1年で起きた。そこでわかったのは配信で映像の魅力を知ったお客さんが特別な体験として劇場に来てくれること。大きなスクリーンで感動を共有できることに改めて気づいたのでは」と語った。

 客層について親川さんは

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