「同姓がイヤなら通称を使えばいいじゃない」という浮世離れ感
2021年03月09日
男女共同参画担当相に就任した参議院議員の丸川珠代氏が、選択的夫婦別姓に反対していたことが発覚し、波紋が広がっています。
自民党の国会議員50名が、選択的夫婦別姓制度への反対を呼びかける書状を、2021年1月30日付で埼玉県議会議員宛てに送った際、丸川氏もそこに名を連ねていたのです。
「強制的夫婦同姓」とも言うべき現行の婚姻制度を是正するよう国連の女子差別撤廃委員会から再三勧告を受けているにもかかわらず、それを温存しようという考えの持ち主が、男女共同参画担当相に就くことは大きな矛盾です。
かつての記事『杉田水脈議員の“名誉男性活躍”が止まらない』(「論座」2020年10月1日)では、自民党の杉田水脈衆議院議員が、自民党内の性暴力被害対策の予算などを議論する会合において、「女性はいくらでも嘘をつく」と発言した件について書きました。
記事の中では、杉田氏のような人物がその会合に出席していること自体が「不適材不適所」だと指摘しましたが、今回の丸川氏の件も同様に、明らかな「不適材不適所」でしょう。大臣というポストを考えると、その影響はより深刻かもしれません。
これは、温暖化対策に反対する石炭開発企業の役員が環境大臣に抜擢されるようなものではないでしょうか。それが環境政策を愚弄し、「進める気は無い」というメッセージを与えるのと同様、男女共同参画推進政策自体を否定している意味を持つと思います。
菅首相は、「(書状については任命時に)承知していないけれども、事実を知っていても、大臣は丸川さんにお願いする」「適材適所の観点から丸川大臣の能力・経験等を総合的に考慮して大臣に任命した」と述べていました。「菅政権では、選択的夫婦別姓は進めない」というメッセージとしか思えません。
自民党は、選択的夫婦別姓の導入を検討するプロジェクトチームを新たに設置し、近く議論を再開させる方針を固めてはいるものの、国内外からの批判を和らげるためのポーズ、ガス抜きではないかという強い懸念を覚えます。
確かに、菅政権誕生直後の2020年10月頃には、選択的夫婦別姓や緊急避妊ピルの市販化等、これまで停滞していた政策を進めるかのような報道が流れ、インターネット上では、歓喜する人も大勢いました。
ところが、政権はその後コロナ対策で失敗し、たび重なる政治と金、会食等の問題で支持率を大きく下げました。昨年(2020年)末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画において、「夫婦別姓」という文言自体を削除する等の「後退」が見られたように、コアな支持層である保守層の反発を招く政策を進めることは、かなり難しくなったように思います。もう次の政権に期待するしかないのかもしれません。
話を丸川氏に戻します。3月3日の参院予算委員会で、福島瑞穂議員から「なぜ、選択的夫婦別姓に反対なのか」と詰め寄られましたが、7回続けて答弁を拒否していました。
酷い態度だと批判が集まるのも当然だと思う一方で、「反対の立場であれば、このような対応で乗り切る方法しかないのかもしれない」とも思います。というのも、
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