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接待病の感染は贅沢な貴族社会の再来だ――高級官僚だった叔父を思いつつ

少数の人間が密室でことを決める「再封建化」

三島憲一 大阪大学名誉教授

 菅総理の息子らによる総務省幹部への接待という報道のほとぼりも冷めないうちに、それまで「他から接待を受けたことはない」という趣旨の発言をしていた谷脇康彦総務審議官その他がNTTから数度にわたって高額の接待を受けていたとの報道が流れた。黒川弘務東京高検検事長の麻雀事件もそうだったが、まことに日本を守ってくれるのは自衛隊でもなんでもなく『週刊文春』としか言いようがないが、それはともかくとして、辞職した内閣広報官山田真貴子氏もNTTの接待を受けていたそうだ。

 谷脇氏の場合は、NTTの社長も同席していたとのこと。完全な嘘つき集団だ。記憶力だけが自慢の官僚たちが突然健忘症に感染したようだ。健忘症はコロナよりも感染力が強い。高額接待を受けておいて、「利害関係者との認識はなかった」と嘘に嘘を重ねるいつものパターンも感染力の強さを誇っている。

 こうなると単に菅総理とその長男のどこか田舎芝居めいた接待政治そして門閥政治というだけではないようだ。もっと大きく、許認可官庁と関係業界との癒着という構造的な側面こそが問題だ。個性的な風采の長男君の挙動不審は、検察が動いて当然のこととはいえ、あくまでこのネットワークのひとつのエピソードにすぎないのかもしれない。

参院予算委員会に出席した武田良太総務相(左)と谷脇康彦・前総務審議官(右)=2021年3月8日拡大参院予算委員会に出席した武田良太総務相(左)と谷脇康彦・前総務審議官(右)=2021年3月8日

 実は筆者には辞職に追い込まれた山田真貴子氏や同じく左遷された秋本芳徳情報流通行政局長氏などとほぼ似た仕事をしていたと思われる(旧)郵政官僚の叔父がいた。広義では彼らのはるかに遠い前任者だ。この叔父は、電波の割り当てを主たるお役目とする、かつては電波監理局という名称の本省の局長だった。のちには通信関係の国連組織の官僚にもなった。大学で電波工学を専攻したいわゆる技術系の高級官僚だ。

 ドイツに滞在していた筆者が国連官僚をしていた叔父をジュネーブに尋ねたときは、土地ゆかりのヴォルテールの話をしあった。「ヴォルテールばりのユーモアとちゃかしは批判として効くね」という叔父の言葉は今でも拳々服膺(けんけんふくよう)している。

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筆者

三島憲一

三島憲一(みしま・けんいち) 大阪大学名誉教授

大阪大学名誉教授。博士。1942年生まれ。専攻はドイツ哲学、現代ドイツ政治の思想史的検討。著書に『ニーチェ以後 思想史の呪縛を超えて』『現代ドイツ 統一後の知的軌跡』『戦後ドイツ その知的歴史』、訳書にユルゲン・ハーバーマス『近代未完のプロジェクト』など。1987年、フィリップ・フランツ・フォン・ジーボルト賞受賞、2001年、オイゲン・ウント・イルゼ・ザイボルト賞受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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