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【公演評】月組『幽霊刑事~サヨナラする、その前に~』

プレさよならで最強コンビが復活-珠城りょうが“みんなを幸せにして花道を飾る”

さかせがわ猫丸 フリーライター


 月組公演バウ・プレイ『幽霊刑事~サヨナラする、その前に~』が3月7日、宝塚バウホールで初日を迎えました。トップの珠城りょうさんは、次の大劇場公演で退団を発表しているため、これがプレさよなら公演となります。

 有栖川有栖さん原作のミステリー小説『幽霊刑事』を原作にしたミュージカルは、幽霊となった刑事が、霊媒体質の同期刑事と組んで事件を解決する“バディもの”。珠城さんと絆深い鳳月杏さんが霊媒刑事をつとめ、タッグを組むのもファンにとってはたまらないのではないでしょうか。

 笑いもいっぱいのハートウォーミングなストーリーに加え、劇中のセリフが今の珠城さんに何度もオーバーラップし、胸に迫ります。男役らしいスーツ姿でビシッと決めて、おおらかで優しい珠城さんの魅力がたくさん詰まった舞台となりました。(以下、ネタバレがあります)

等身大で輝きを増す珠城

 珠城さんが月組トップスターに就任したのは研9の頃、天海祐希さんに次ぐ歴代2番目の若さでした。男役らしい容姿と実力で、入団時より未来のトップを予感させる逸材でしたが、就任の早さは予想以上だったかもしれません。そんな異例の大抜擢にも見事に応え、たくましい包容力で月組生とファンを大きく、あたたかく包み込んできた珠城さん。退団への花道が見えてきても、ますます若さとエネルギーがみなぎっています。

――巴東署の刑事・神崎達也(珠城)は、森須磨子(天紫珠李)との結婚を控え、充実した日々を送っていたが、ある日、突然、上司の経堂芳郎(光月るう)に射殺されてしまう。署では、新田克彦(紫門ゆりや)殺害に続く連続刑事殺人事件として衝撃が走った。理由もわからず殺された神崎は、成仏できずに幽霊になるが、母(京三紗)や須磨子ですら誰一人彼の存在には気づかなかった。

 刑事らしいスーツにロングコートのスタイルは、これぞ珠城りょう!と言いたくなるカッコよさ。ファンの間で大人気だった、2018年大劇場公演『カンパニー』のサラリーマン青柳さんも彷彿とさせます。クールな男を象徴するスーツも、さわやかな体育会系・珠城さんにかかると、「結婚したくなる男」の必殺アイテムになってしまうのが憎い。

 刑事だった父が殉職しても同じ道を歩んだ神崎は、私生活も仕事も充実してまさにこれからという時に命を落としてしまいます。目の前で恋人が自分を想って泣いていても、抱きしめることさえできない神崎が切なくてたまりません。扱う内容がセンシティブではあるのですが、幽霊であることの自由さともどかしさをコミカルに描いて、笑いのシーンもたっぷり。一方、母親役の京さんや幽霊の老人・汝鳥伶さんら専科さんとの深みある芝居に胸打たれたり、退団を連想させるセリフが何度も登場するなど、笑わされたと思ったらすぐ涙腺を刺激され、心休まる暇もなく、最後まで物語に引き込まれました。

 なにより素直さやおおらかさが等身大の珠城さんのようで、神崎自身がいとおしくなってきます。経験を重ね、研ぎ澄まされたトップスターのオーラと、まだまだまぶしいほどの若さにあふれた珠城さんが今、最高に輝いています。

◆公演情報◆
『幽霊刑事(デカ)~サヨナラする、その前に~』
2021年3月7日(日)~3月23日(火) 宝塚バウホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:有栖川 有栖(幻冬舎文庫刊「[新版]幽霊刑事」)
脚本・演出:石田昌也

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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