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必見!『マンディンゴ』――非情かつグロテスクな米“奴隷牧場”を激写

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

 名匠リチャード・フライシャー監督の“呪われた傑作”、『マンディンゴ』(1975)が46年ぶりにリバイバル上映されている。カイル・オンストットの同名小説を原作に仰いだ必見作だが、アメリカ南北戦争(1861~65)の約20年前の南部ルイジアナのプランテーション(大農園)を舞台に、黒人奴隷とその所有者の白人をめぐる支配/被支配の残酷なドラマが、一片の感傷もなく過激に描かれる。

 そのタッチは、ひたすら非情かつグロテスクだが、おそらくその救いのない作風ゆえ、『マンディンゴ』は公開当時、映画評論家ロジャー・エバートによって「人種差別的クズ〔映画〕だ」と切り捨てられ、ニューヨーク・タイムズのヴィンセント・キャンビーによって「最悪の映画」「下品の一言」と酷評された。

©1974 STUDIOCANAL.All Rights Reserved. 東京・新宿武蔵野館ほか全国公開中! 配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
拡大『マンディンゴ』 ©1974 STUDIOCANAL.All Rights Reserved. 東京・新宿武蔵野館ほか全国公開中 配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム

 しかし、『マンディンゴ』を虚心に観れば明らかだが、これはけっして黒人差別を助長し奴隷制度を礼賛するような、レイシズム(人種主義)的・白人至上主義的な映画ではない。また、グロテスクな場面を笑って楽しむ猟奇的なゲテモノ映画でもない。それどころか本作は、告発調の社会派映画とはまったく異なる視点から、黒人差別や奴隷制度を高度な手法で――メッセージや糾弾ではなく、描写やシチュエーションそのものによって――アイロニカルに批判し、白人たちにリアルで醜悪な自画像を突きつけたのだ。大ヒットしたにもかかわらず、『マンディンゴ』がリベラル派の批評家にさえ拒絶され、長らく黙殺されてきたゆえんである。

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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