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コロナ重症化のカギは免疫にある――宮坂昌之教授(免疫学)に聞く

ワクチンの接種で、「発症」だけでなく「重症化」予防も

鈴木理香子 フリーライター

季節性コロナにかかった人は重症化しにくいのか?

ワクチン接種を受ける前橋赤十字病院の医療従事者=2021年3月19日拡大ワクチン接種を受ける群馬県・前橋赤十字病院の医療従事者=2021年3月19日

――新型コロナウイルス感染症にT細胞が関与する研究には、どんなものがありますか?

宮坂 まず、アメリカ、オランダ、ドイツなど7カ国で報告された研究報告があります。いずれも、2019年以前の、新型コロナウイルスが存在する前に凍結していた血液サンプルを調べたところ、なんとそのサンプルの2~3割に新型コロナウイルスに反応するヘルパーT細胞が見つかりました。これはおそらく昔から新型コロナウイルスが存在していたというよりも、何か別のコロナウイルスの交差免疫(後述)によるものだと考えられます。

 基本的にT細胞は一つの抗原に反応するようにできています。そのため、ふつうは新型コロナウイルスの抗原に反応するT細胞は、インフルエンザウイルスなどほかのウイルスには反応しません。ですが、例外として別のウイルスが新型コロナウイルスと共通の抗原を持っていれば、両方のウイルスに反応することができます。これを交差免疫といいます。

 普通の風邪を起こす季節性コロナウイルスは、新型コロナウイルスのほかに4種類あります。これらに過去に感染した人が、交差免疫を持った可能性があるのです。

 実際、季節性コロナにかかった人が新型コロナウイルス感染症にかかりにくいのか、あるいは重症化しにくいのかを調べた研究結果がアメリカから報告されています。それによると、感染予防にはあまり効果がないものの、重症化予防には効果がありそうとのことでした。

 ドイツではまた、新型コロナウイルスの感染者を軽症者、中等症者、重症者にわけ、血液中のヘルパーT細胞を調べた研究結果が発表されています。血液中からは症状が重くても軽くても同じように、多くのヘルパーT細胞が見つかっていたのですが、問題はその中身でした。

 軽症者の血液中のヘルパーT細胞は、新型コロナウイルスに反応性が高い“高親和性”のものが多く存在していたのですが、重症者ではウイルスに反応しにくい“低親和性”のものが多く存在していたのです。

 低親和性のヘルパーT細胞はウイルスを抑制する力が弱いため、ウイルスがどんどん増殖し、それを受けて免疫暴走によるサイトカインストームが起こる――。こんなメカニズムが働いていると推測されるわけですが、今のところ、なぜ低親和性のヘルパーT細胞が増えるのか、また、どういう人が低親和性のヘルパーT細胞を持ちやすいのか、そういったことは明らかになっていません。それが解明できれば、重症化するかどうかが判定できるバイオマーカーができるかもしれないですね。

――レギュラトリーT細胞に関しての研究はありますか?

宮坂 免疫にブレーキをかけるレギュラトリーT細胞に関してはつい最近、二つの論文がほぼ同じタイミングで出ました。興味深いのは、二つが相反する内容だったことです。一つは、レギュラトリーT細胞が末梢血(血管の中を流れる血液)では増えていたという報告、もう一つは、レギュラトリーT細胞が肺の中で著しく減っていたという報告だったのです。

 一般的に、感染によって激しい炎症が起こっている場所では、さまざまな免疫細胞が反応し、サイトカインを作っています。こうしたサイトカインはレギュラトリーT細胞にダメージを与えるため、その数が減って炎症にブレーキがかかりにくくなっています。ただその一方で、こうした反応は局所だけなので、末梢血ではレギュラトリーT細胞が多く存在しているのかもしれないのです。

 この二つの研究が正しいとしたら、レギュラトリーT細胞が肺で少なく、末梢血で多かったのは、こうした理屈が考えられるわけです。ただ、レギュラトリーT細胞の新型コロナウイルス感染症への関与はまだわかっていないことが多いので、これからの研究報告が待たれます。

ワクチン接種後に強いアレルギー反応を起こしたと想定した患者にアドレナリンを注射する模擬実験=2021年3月15日午後7時46分、秋田市保健センター拡大ワクチン接種後に強いアレルギー反応を起こしたと想定した患者にアドレナリンを注射する模擬実験=2021年3月15日、秋田市保健センター

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筆者

鈴木理香子

鈴木理香子(すずき・りかこ) フリーライター

TVの番組製作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです