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田代万里生&新納慎也インタビュー/上

ひと言一言に僕たちの血を注いでいった『スリル・ミー』

橘涼香 演劇ライター


 1920年代、全米を震撼させた二人の天才による衝撃の事件を基に、たった二人の出演者“私”と“彼”、そして一台のピアノのみで繰り広げられるミュージカル『スリル・ミー』。

 シンプルであるがゆえに緊迫した空間。客席を圧倒するエネルギー。強烈な旋律の頂点に向かって走る100分間が、大きな評判を呼び公演を重ねてきたこの作品の、伝説の日本初演から10年。作品は更なる進化を遂げて、2021年4月1日~5月2日、東京芸術劇場シアターウエストで上演される(その後、群馬、愛知、大阪公演あり)。

 息をもつかせぬ究極の100分間を演じるのは三組のペア。伝説の初演ペアである、田代万里生(私)×新納慎也(彼)。2018年公演から引き続きの出演となる成河(私)×福士誠治(彼)。そして、10年の節目にオーディションを実施し選ばれたフレッシュな2人、松岡広大(私)×山崎大輝(彼)だ。

 そんなメモリアル公演を前に、最大の話題を振り撒いて再登場を果たす田代万里生(私)×新納慎也(彼)ペアが、初演を立ち上げた当時の思い出、改めて取り組む作品と役のこと、そして互いに感じる魅力を語り合ってくれた。

お客様の反応に「衝撃」を感じた初演の初日

拡大田代万里生(右)&新納慎也=宮川舞子 撮影

──『スリル・ミー』日本初演から10年、初演を担ったお二人が再登場を果たすことが大きな話題となっていますが、まずその初演の思い出からお話を伺えますか?

田代:栗山(民也)さんの演出を受けるのも、新納(慎也)さんとご一緒させていただくのも、二人芝居も、全てが初めての経験でした。100分間の舞台の中で、僕はほぼずっと舞台に出ている、出ずっぱりの役でしたし、役の年齢の幅も広かったので、初演は何がわからないのかがわからない(笑)という状態で臨みました。そんな僕を栗山さんと新納さんが見事に導いて下さって。壁はたくさんありましたが、毎日の稽古の中で、一日、一日、着実に作品の完成に向かって歩いているという実感があったんです。そこから日本初演の初日を迎えた時の、お客様の反応がまさに「衝撃」という文字が相応しいという感覚で。あのような感覚は他の作品では受けたことがなくて、この作品の力と栗山さんの演出の力を改めて強く感じた機会でした。

新納:初めてこの作品のオファーをいただいた時に、まだ台本ではなくプロットだったのですが、プロデューサーさんが楽曲をかけながらそのプロットを読んで下さいました。その頃の僕は如何にもミュージカルという作品もそれはそれで好きだったのですが、ちょうどミュージカルにももっとリアリティを求めてもいいんじゃないか?と思っていた時期だったので、これは!と思って、二つ返事で引き受けました。その時には万里生は、歌ばっかりのグランドミュージカルを何本かやっただけの頃だったので。

拡大田代万里生=宮川舞子 撮影

田代:まだ俳優というより、歌手だったと思う。

新納:そうだね。そんな彼と稽古に入ったら、栗山さんの中には「ミュージカル」とか「芝居」とかの垣根は全くなくて、「これは芝居の稽古なのか?」というくらいの稽古が進んでいきました。でも何しろ初演なので、台本もまだ韓国語から直訳されただけのものだったり、歌詞も決まっていなくて、譜面に手書きで書かれてはいるものの、いっぱい抜けている部分もあるという状態でした。そこから僕ら二人が歌ってみて「この言葉では歌いにくいか?」などを確認しながら、僕らの意見も反映していってくれて。「この人の人格だとこういう言い方はしないんじゃないか」なども一つひとつ考えていきました。例えば「YES」と書かれていても、日本語だと「はい」なのか「うん」なのか「あぁ」なのかでずいぶん違ってくるので。

田代:「まぁ」とかね(笑)。

新納:そうそう(笑)。そういう日本語の微妙なニュアンスが、役としての生理に合うのか?というところからじっくり立ち上げていったんです。ですから初演は半年以上の時間をかけましたし、ひと言一言に僕たちの血を注いでいったという印象です。

拡大新納慎也=宮川舞子 撮影

──そういう作業を経る初演のキャストの方々は、作り手の一人でもあるからこそ「オリジナルキャスト」と表現されると伺っていますが、まさにそうして一つひとつ立ち上げていかれたのですね。

新納:ですから自分たちの子供が10歳になった夫婦という感じですね(爆笑)。子供は色々なところにホームスティしていたけれども、久々に実家に帰ってきたね~というのが、今の心境かな。

◆公演情報◆
ミュージカル 『スリル・ミー』
東京:2021年4月1日(木)~5月2日(日) 東京芸術劇場 シアターウエスト
群馬:2021年5月4日(火)~5月5日(水) 高崎芸術劇場 スタジオシアター
愛知:2021年5月15日(土)~5月16日(日) ウインクあいち大ホール
大阪:2021年5月19日(水)~23日(日)  サンケイホールブリーゼ
公式ホームページ
公式twitter
[スタッフ]
原作・脚本・音楽:Stephen Dolginoff
翻訳・訳詞:松田直行
演出:栗山民也
[キャスト]
私役:田代万里生 × 彼役:新納慎也
私役:成河 × 彼役:福士誠治
私役:松岡広大 × 彼役:山崎大輝
ピアニスト:朴勝哲、落合崇史、篠塚祐伴
 
〈田代万里生プロフィル〉
 東京芸術大学音楽部声楽科テノール専攻卒業。大学在学中、東京室内歌劇場公演オペラ『欲望という名の電車』日本初演で本格オペラデビュー。2009年『マルグリット』でミュージカルデビュー、12年『ボニー&クライド』で初のタイトルロールを務める。主な出演作は『マリー・アントワネット』『Op110.ベートーヴェン「不滅の恋人」への手紙』『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』『エリザベート』など。第39回菊田一夫演劇賞受賞。
オフィシャルサイト
 
〈新納慎也さんプロフィル〉
 16歳の時スカウトがきっかけでモデルの仕事を始める。その後、ストレートプレイやテレビドラマなど活躍の場を広げる。2009年には『TALK LIKE SINGING』でNEW YORK OFF BROADWAYデビューを果たす。主な舞台出演作品は、『日本の歴史』『生きる』『ラ・カージュ・オ・フォール』『パジャマ・ゲーム』『パレード』など。
公式ツイッター

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筆者

橘涼香

橘涼香(たちばな・すずか) 演劇ライター

埼玉県生まれ。音楽大学ピアノ専攻出身でピアノ講師を務めながら、幼い頃からどっぷりハマっていた演劇愛を書き綴ったレビュー投稿が採用されたのをきっかけに演劇ライターに。途中今はなきパレット文庫の新人賞に引っかかり、小説書きに方向転換するも鬱病を発症して頓挫。長いブランクを経て社会復帰できたのは一重に演劇が、ライブの素晴らしさが力をくれた故。今はそんなライブ全般の楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしたい!との想いで公演レビュー、キャストインタビュー等を執筆している。

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