幻想にはばまれる日本社会のジェンダー平等への道
2021年04月01日
3月22日、「報道ステーション」(テレビ朝日系)のWebCMが炎上した。主人公の女性が「ジェンダー平等とかって、何それ、時代遅れ」などと発したり、テロップに「こいつ報ステみてるな」という、まるで男性が主人公の女性を下にみる表現が用いられ、「女性蔑視だ」「ジェンダー平等に取り組む人をバカにしている」などと批判があり、公開2日後に削除された。このCMの問題点は、ジェンダー研究者を中心に大方的を得た分析が行われており、詳細はそちらをご覧いただければと思う(ハフポスト日本版、朝日新聞、東京新聞、毎日新聞など)。
筆者が社会学を基礎とするジェンダー・フェミニズム研究者として気になっているのは、「このCMって届けたい層に届いているのか?」である。
なぜ、これが大事な視点なのだろうか。端的に言って、ジェンダー平等はその社会の反映であり、また個人の努力のみで解決できることではない。だから「わたしには関係ない」という問題ではないのである。従って、しばしば登場する「ズレ」を見るにつけて、社会の実態と幻想(思い込み/こうあって欲しい/こうあるべき)の行方が気になってしまうのだ。
「報道ステーションのCMを見てどう思った?」(筆者)
「う? なんですかそれ?」(20歳代女性)
「ほら、あれだよ、炎上したCM。俺は〇〇(女性政治家)好きじゃないけどジェンダーがどうのこうのって」(40歳代男性)
「う? 知らないです」(20歳代女性)
「〇〇さん(20歳代女性)のような世代にみてほしいっていうCMだよ」(筆者)
「いやー、興味ないですね」(20歳代女性)
緊急事態宣言があけてすぐ、飲食店の友人の「悲鳴」を見かねて、東京のオフィスエリア近くの居酒屋で中小企業の会社員たち(高卒・大卒・理系・文系混在)が店を貸し切りにしていた。
筆者は取材ではなく友人として聞いてみた。40代男性は、CMを批判した女性政治家を「過剰反応。意図をわかってない」と左派陣営を軽蔑し、20代女性は「報道ステーション? そもそもニュース見ないし。子ども連れてくる? うー、意味よくわからない」と言って、すぐに、隣の同僚とバラエティ番組の話をしだした。40代男性は、普段は「ふつう」に日本社会をわたり歩き、女性蔑視的思考を普通に内面化している人だ。現代のスタンダードである。明確に「おんなは〇〇だ!」というタイプではない。20代女性も同様である。
この会話を聞いて「あ、やっぱりな」と実感した。その「やっぱり」とは、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください