鈴木理香子(すずき・りかこ) フリーライター
TVの番組製作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
看護師が自分の技術や経験を駆使して「看護」ができる医療現場を
実は、看護師不足や看護師の労働環境の問題は今に始まったことではなく、戦後からずっと続いています。私が看護師になって70年あまり経ちますが、看護師が足りていた時期はこれまで一度たりともありません。
国も何度となく看護師の増員を図ってきました。その結果、看護師の数は年々増え、現在就業者数(准看護師を含む)は160万人を超え、医療従事者の中でもダントツに多くなりました。それでも今の日本の医療を支えるには数が足りず、看護師は常に多忙感を抱え、疲弊しています。
なぜ看護師が足りないのか、その理由は大きく二つあります。一つは医療の高度化、もう一つは超高齢化です。
看護師の役割を定めた法律に、「保健師助産師看護師法(保助看法)」があります。ここには、看護師の二大業務として「療養上の世話」と「診療の補助」が挙げられています。
療養上の世話は、健康なときに自ら行ってきた日常的な営みを、病気や手術、高齢などといった状態にかかわらず、できるだけ継続できるよう援助することです。また、患者さんのそばにいて、聴き、触れることが看護の基本です。手や背中を黙ってさするだけで患者さんの心が開かれ、不安が和らぎ、痛みさえ取り除かれることがあるのです。
ところが、実際には1日の仕事の大半が診療の補助に割かれ、療養上の世話にまで手が回らない状況が長く続いています。患者さんに直接触れるケアの頻度が少なくなってしまったのです。