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同性婚のある社会で暮らして見えてきた結婚の自由の意義

社会の公正と生産性の向上を目指す布石として同性婚を認めること

山田公二 カナダ在住 非営利団体職員

婚姻を「当然の権利」と認めてくれた言葉に涙







同性婚訴訟判決 札幌地裁  
写真説明 判決後の会見を終え、ペアウォッチをはめた手を取り合った原告=2021年3月17日午後3時59分、札幌市中央区 
拡大「同性婚を認めないのは憲法違反」との札幌地裁判決後の会見を終え、ペアウォッチをはめた手を取り合った原告=2021年3月17日

 移民申請に必要な書類を持って、大阪にあったカナダの総領事館へ行った。その際、カナダでも同性どうしの婚姻は当時まだ認められていなかったので、婚姻を理由としてではなく個人で移民する申請の準備をしていったのである。領事の方は私とパートナーを執務室に招き入れてくださり、書類に丁寧に署名をしながら、こうおっしゃったのだ。

 「残念ながら、カナダは今の時点では同性婚を認めていません。しかし、既に事実婚については、性別にかかわらず2人の婚姻関係を認めています。領事として、カナダで同性婚が認められるようになるのは時間の問題だと判断し、あなたがカナダ人のパートナーとの婚姻者として、この移民申請を提出されることをお勧めします。Welcome to Canada.(カナダへようこそ)」

 この領事の方のことばを聞いて、不意に堰を切ったように、涙がたくさん溢れ出た。自分でもその涙の理由がよくわからないまま、その領事の方に拙い英語で自分の感謝の気持ちを伝えた。「私たちの関係を認めてくださって、ありがとうございます。カナダに移民できることがとても楽しみで、カナダという国を誇りに思います」。

 それまで、自分が男性のパートナーと暮らしていることについて、やましい思いはなかったものの、他人に余計な心配や憶測を起こさせたくないという気持ちが先立って、家族以外の誰にも伝えたことはなかった。言わなければいい、聞かれれば適当に「友達です」などと答えておけばよい、そういう遠慮を常にしていた。その領事の方が、同情や親切心や思いやりなどからではなく、当然の権利(entitlement エンタイトルメント)として、私たちふたりの婚姻関係を公に認めてくださったその発言で、私の中のその遠慮の隙間から、光が差し込んできたような気分だった。

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筆者

山田公二

山田公二(やまだ・きんじ) カナダ在住 非営利団体職員

兵庫県神戸市生まれ。2004年にカナダ人のパートナーとカナダで同性婚。2008年、大阪大学大学院人間科学研究科在籍中に国際交流基金トロント日本文化センターへ運営専門員として派遣を受け渡加。カナダ市民権(国籍)を取得しカナダ人として暮らす。現在はトロントで子どもの精神衛生を扱う専門機関 Child Development Institute 職員