1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。本の情報サイト『好書好日』で「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。総合誌『情況』にてハードボイルド小説「黒ヘル戦記」を連載中。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【8】「007 ロシアより愛をこめて」の原作を読んでみた
イギリスのスパイ、ジェームズ・ボンドが活躍する007シリーズ。その第1作『ドクター・ノオ』が公開されたのは1963年である。それから半世紀以上経つというのに、このシリーズはまだ続いている。いったい何人が007を観たのか、と思って少し調べてみたら、三代目ジェームズ・ボンドのロジャー・ムーアの著書『BOND on BOND』にこう書いてあった。
「世界で最も長期にわたっているこのシリーズを、少なくとも1本は観たことがあるという人は、世界の人口の半数以上にのぼるらしい」
ちなみに、今日の世界人口は約78億人である。
映画007シリーズには20本以上の作品があるが、その中で最も多くの人に観られた作品は何か、についても調べてみたが、これはわからなかった。
人気ランキングもいろいろ見たが、初代ボンド、ショーン・コネリー主演のものが上位を占めているものもあれば、六代目ボンド、ダニエル・クレイグ主演の『カジノ・ロワイヤル』や『スペクター』が上位に入っているものもあり、どれが一番人気なのかもはっきりしなかった。
が、原作の最高傑作ははっきりしていた。ジェームズ・ボンドの生みの親イアン・フレミングは、ボンドの登場する長編小説12作と短編集2冊を残したが、この小説007シリーズの中では第5作の『ロシアから愛をこめて』(映画では『ロシアより愛をこめて』)が最高傑作である。
なぜ、そう言い切れるかというと、創元推理文庫の『ロシアから愛をこめて』の裏表紙に「シリーズ最高峰の傑作」と書いてあるからだ。版元さんが「これが最高!」と言っているのだから間違いないだろう。
しかし、なぜ、この作品が最高なのかについての説明はない。いったい、この作品の何がいいのか、他の作品とはどう違うのか、その謎を解くために、『ロシアから愛をこめて』を読んでみた。