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【公演評】花組『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』

理想に向かって歩む柚香光を重ねた“尊厳者”とは――

さかせがわ猫丸 フリーライター


 花組ドラマ・ヒストリ『アウグストゥス-尊厳ある者-』、パッショネイト・ファンタジー『Cool Beast!!』が、4月2日、宝塚大劇場で初日を迎えました。古代ローマを舞台に、貴族の末裔オクタヴィウスが初代皇帝アウグストゥスとなるまでの物語を、史実を交えて書き下ろされたオリジナル作品です。若さゆえの弱さや儚さを持つ青年がやがて大輪の花を咲かせる姿を、トップスターの柚香光さんに重ねて描かれました。

 また、この公演では、トップ娘役の華優希さんと瀬戸かずやさんが退団します。花組を中心で支え続けた2人が、芝居でもショーでもその魅力をすみずみまで発揮し、ともに有終の美を飾りました。

 さらに、これまでコロナ禍により録音だった音楽が、いよいよ生オーケストラで復活します。音合わせする楽器の音が鳴り響くと、開演前のワクワク感が蘇り、肌で感じる生音の素晴らしさを再確認する公演ともなりました。(以後、ネタバレあります)

若さ、弱さをリアルに演じる柚香

拡大『アウグストゥス-尊厳ある者-公演から、オクタヴィウス役の柚香光=岸隆子 撮影

 柚香さんが演じるのは、ローマの名門貴族ユリウス家の末裔、ガイウス・オクタヴィウス。古代の三大美男子の一人と言われ、どの博物館に保存されている彫像を見ても、その美しさはきわだっています。幼い頃から聡明で常に勇敢でしたが、実は体が弱かったとのこと。そんな彼を長年、支えてきた友アグリッパを、同期の水美舞斗さんが演じるのも見どころでしょう。そんな歴史的背景を知っておくと、より楽しめるかもしれませんね。

――紀元前46年、ローマ。政敵ポンペイウスに勝利したカエサル(夏美よう)は、敵対していた貴族たちを招き、和解の宴を開いていた。大甥オクタヴィウス、カエサルの腹心アントニウス(瀬戸)、愛人クレオパトラ(凪七瑠海)、そして内乱時にカエサルを裏切ったブルートゥス(永久輝せあ)らが集っていたが、そこへ突然、ポンペイウスの娘ポンペイア(華)が乱入し、ナイフを手にカエサルを襲う。とっさにオクタヴィウスはわざと自分を切りつけさせ、彼女を許すことが和解のしるしと場を収めた。新しい平和の時代に期待するオクタヴィウスにカエサルは、「共和政治など幻、必要なのは独裁者だ」と言い放つ。

 物語は、ギリシアに遊学中のオクタヴィウスが、カエサルの祝宴に駆けつけるところから始まります。ウエーブの強い髪に、マントをひるがえす古代ローマの衣装が柚香さんのマスクに映え、美男子設定に文句なし。見た目の精悍さから、さぞ勇ましいキャラクターかと思いきや、争いとは無縁の知性豊かな温厚青年で、その印象は最後まで変わりません。柚香さんはそんなオクタヴィウスを、おだやかに繊細に演じています。正義感にあふれながらも、カエサルの本音に戸惑ったり、肝心の場面で弱さを垣間見せるなど、まだ20歳そこそこの若さをリアルに伝えていました。現代的で激しい役柄が得意そうに見える柚香さんですが、優しくて引きの演技も巧く、細かな表情が見逃せません。

◆公演情報◆
『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』
2021年4月2日(金)~5月10日(月) 宝塚大劇場
2021年5月28日(金)~7月4日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『アウグストゥス-尊厳ある者-』
作・演出:田渕大輔
『Cool Beast!!』
作・演出:藤井大介

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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