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車いす“乗車拒否”問題はJRの努力不足が要因。伊是名氏批判も一種の障壁

社内周知と情報ロジスティックスの整備を急げ

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 コラムニスト・伊是名夏子氏の『JRで車いすは乗車拒否されました』というブログの文章が、インターネット上で大きな波紋を広げています。

 電動車いすを利用する伊是名氏は、静岡県熱海市の来宮神社へ旅行をしに行く際に、小田原駅で来宮駅までの車いす対応をお願いしたところ、駅員から「来宮駅は階段しかないのでご案内ができません」と断られたとのことです。

 熱海駅の駅長が特別に対応したために、結果的に伊是名氏は来宮駅まで行くことができたのですが、それはあくまで特別対応に過ぎず、基本的に車いすユーザーが来宮駅を利用できない状況は何ら変わらないため、ブログで問題提起をしたという流れです。

コラムニスト伊是名夏子さんのブログ伊是名夏子さんのブログ

 これに対して、伊是名氏のアクションを支持する人々が、「#伊是名夏子さんを支持します」というハッシュタグをつけてTwitterに投稿し、トレンド入りしました。一方で、伊是名氏のアクションを批判する投稿も非常に多く見受けられます(ここでは紹介しませんが、誹謗中傷、人格攻撃、差別発言、陰謀論等も溢れ返っており、それらは決して許されるものではありません)。

障害者差別解消法で求められる鉄道の「合理的な配慮」とは

障害者差別解消法の施行を祝うパレード。参加者は繁華街で「全ての人にやさしい社会を」などと声を上げた=東京都 2016年3月31日障害者差別解消法の施行を祝うパレード=2016年3月31日、東京都内

 このようなケースを考える上で絶対におさえておかなければならないのは、2016年4月に施行された「障害者差別解消法」でしょう。

 この法律では、国や地方公共団体に対して、状況に合わせて適切な配慮を行う「合理的な配慮」により、社会的障壁を取り除くことが法的義務として課されています(民間事業者は努力義務)。

 これに合わせて、「公益財団法人・交通エコロジー・モビリティ財団」が発行した交通事業者や利用者向けのパンフレット2016年版には、合理的配慮を提供するための検討フローとして、以下のことが書かれていました。

「できない」と判断する前に、どうすれば対応できるかを考えることが重要であり、利用者との協力により解決策を考える姿勢が求められてます。「過度な負担だから対応しなくてよい」と安易に考えることは問題の解決につながりません。

 翌2017年、奄美空港で車いすの乗客に自力でタラップを上がらせる対応を取った格安航空会社(LCC)バニラ・エアの問題では、この法律が効力を発揮し、バニラ・エアは障害者差別解消法に違反していると批判され、謝罪しています。

小田原駅の対応は合理的配慮を十分行ったものと言えるか

 では、はたして小田原駅での対応は、障害者差別解消法に沿うものだったのでしょうか? 今回の件で、近隣の熱海駅に車いす対応ができるキャパシティーがあることは判明しました。もちろん、いつでも対応可能ではないと思いますが、工夫すれば可能だったわけです。

 ところが、伊是名氏のブログを見る限りでは、小田原駅は「熱海駅は一切そのような手配は行っておりません」と、実際とは異なる情報を提供しています。どうすれば対応できるか、解決策を考える姿勢とは思えません。

 朝日新聞GLOBE+の記事で、JR東日本横浜支社広報室は「介助が必要なお客さまが無人駅等をご利用になる際、駅係員を手配して介助させていただいています」と回答していますが、当初はそれと矛盾した対応をとっていました。「ご説明が十分でなかった」と釈明していますが、実際は「ご説明が不適切だった」のではないでしょうか?

「事前連絡すればいい!」というのは

 一方で、伊是名氏に対して、「小田原駅に事前に連絡すればよいだけで、しなかったあなたが悪い」という批判が多々あります。ですが、

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