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『大学教授、発達障害の子を育てる』の著者・岡嶋裕史氏に聞く(上)

「健常児と発達障害児を何でもかんでも混ぜればいい、という考えには反対です」

井上威朗 編集者

飲みに誘って、すみませんでした

岡嶋裕史拡大『大学教授、発達障害の子を育てる』の著者、岡嶋裕史さん

岡嶋裕史(おかじま・ゆうし) 1972年、東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学経済学部准教授・情報科学センター所長を経て、中央大学国際情報学部教授(情報ネットワーク、情報セキュリティ)。『5G──大容量・低遅延・多接続のしくみ』『ブロックチェーン──相互不信が実現する新しいセキュリティ』(講談社ブルーバックス)、『ジオン軍の失敗 U.C.0079──機動戦士ガンダム ジオン軍事技術の系譜』(角川コミックス・エース)、『思考からの逃走』(日本経済新聞出版)など著書多数

──『大学教授、発達障害の子を育てる』、すごくいい本でした!

岡嶋 ありがとうございます。でも、井上さんに担当いただいた本も重版を重ねていますよ。本当にいい本にかかわらせていただいて、ありがとうございました。

──という嬉しいお言葉は、実は定型句の使い回しだったのですね……。

岡嶋 はい、そうやってコミュニケーションを乗り切ってまいりました。

──たしかに、今にして思えば違和感を持たなくもなかった。岡嶋先生から多くのご著書を献本いただいたのですが、謝辞の部分がどうもテンプレっぽかったのですよ。

岡嶋 そうでしたか? 決してコピペはせず頑張って書いていたつもりだったのですが!

──でもそれくらいしか気づきませんでした。私のような無礼な編集者とのコミュニケーションで苦痛を抱えながら執筆を重ねられてきたことに想いが及ばなかったこと、すみませんでした。

岡嶋 いえいえ! 人に害意を持つわけじゃないんですよ! 最初の5分、10分はなんとかまっとうな印象になるように頑張れるんですけど、それが30分、1時間となってくると、隠しおおせる自信がないんです。「いまこの瞬間に嫌われただろうか、次の発言で呆れられるんだろうか」とどきどきするのが心臓に悪いので、早めに切り上げたいんですよ。

──本書でも、発達障害において、他者との距離感がわからないのでかかわりを避けるタイプと、そもそも距離感を考える発想がなく乱暴に距離を詰めてきてしまうタイプと、2通りが描写されています。で、岡嶋先生が前者で、息子さんが後者であると。

岡嶋 ええ、グイグイくるんですよ。でも、中学生ともなるとある程度の社会性は獲得していて、知らない人相手にそこまでしなくなりました。話題も選んでいるような気がします。

──それは療育の成果で、選択的に行動ができるようになった、という話でいいのですか?

岡嶋 はい。とはいえ、この「療育」というものについての過度の期待は禁物です。どのような療育をしても、その子のポテンシャル以上にはならないと思うんですよ。逆に、早い遅いの違いだけで、ほっといてもポテンシャルを100%発揮できるところまでいくのかもしれない。

──だからといって療育は意味がないとは言えないですよね。

岡嶋 そうですね。たとえば、じっと座っていられない状態が20歳まで続くのと、10歳で終わるのとでは大違いです。それなら10歳から普通学級で教育を受けることができるかもしれないですよね。ポテンシャルは同じでも、人生のなかで獲得できる知識や技能に差が出てきます。ですが、療育にすごい夢を持ってしまって、とにかくリソースを注ぎこめば健常児と同じところまで行けるのではないか、と考えるのはマズいと思っています。

──あの、ここだけの話、それぐらい頑張ったら、いくらになるのですか?

岡嶋 ……ソシャゲ廃人といわれている人が、ゲームに突っ込む額に近くなるのではないかと。

──要するに、ひと財産ですね。これは簡単なことではないです……。

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筆者

井上威朗

井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者

1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍、科学書などの編集を経て、現在は漫画配信サービスの編集長。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです